2023 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Empirical Research on Signal of Cooperative Intent
Project/Area Number |
21K18558
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大坪 庸介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80322775)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 協力シグナル / out-for-tat(OFT) / 協力 / 進化 / 進化ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、協力シグナルの進化に関して検討を行った。まず、協力シグナルが必要な状況は相互作用パートナーが頻繁に交代する状況であり、特定の相手と相互作用するかどうかを選択可能な状況であると定義した。この状況で、一度形成された関係が長期間継続する場合、out-for-tat(OFT)戦略(同様の戦略がwalk-away戦略と呼ばれることもある)が有効であることが知られている。しかし、特定の相手との関係が長く続かない場合、シグナルにより協力者を選別しながら相互作用をする必要がある。そこで、まずパートナー交代の頻度が高い状況ではOFTではなく、signalを利用するOFT(以下、sOFT)が非協力戦略に対して進化的に安定になることを示した。 しかし、sOFT戦略は、非協力者だけからなる集団に侵入することはできない。それは、パートナーがみつかる頻度が低い(非協力者だけからなる集団に少数のsOFTが侵入するため、sOFT同士のペアが形成される確率が低い)ため、パートナー選択のために発するシグナルのコストが高くなってしまうからである。一方、非協力者だけしかいない集団ではシグナルはさほど高くなくてもフェイクされることがない。そこで、低コストシグナルを発するsOFT戦略であれば非協力者集団に侵入可能であることを確認した。ところが、必要なシグナルコストは非協力的戦略の頻度に依存するため、低コストsOFTは非協力戦略に対して進化的に安定にならないことを示した。 これらの問題を踏まえて、低コスト・シグナルを発することにその効果は蓄積する(記憶)、一度でも非協力すると蓄積した評判が0に戻る(ネガティビティバイアス)という2つの要素をつけ足すとシグナル戦略が非協力集団に侵入可能で、かつ非協力戦略に対して進化的に安定になることを示した。
|