2021 Fiscal Year Research-status Report
Behavioral economics of interactive sports: Building an analytical framework using table tennis as an example
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21K18568
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
本田 秀仁 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (60452017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一敏 オムロンサイニックエックス株式会社, リサーチアドミニストレイティブディビジョン, シニアリサーチャー (10805774)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 行動経済学 / リスク態度 / インタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下に記す3点について取り組み、卓球のプレイヤーが試合時にとっているリスク態度(攻撃的なプレースタイルになっているのか or 守備的なプレースタイルになっているのか)を推定するために、観察データのどのような特徴に注目すべきかについて、分析を進めた。(1)卓球の試合時におけるプレイヤーのリスク態度を推定する上で必要となるプレー内容のアノテーション付与を行った。(2)卓球の試合の動画からプレイヤーの骨格データを抽出するためのアルゴリズムを開発した。(3)卓球コーチングロボットの機能向上に関して検討した。
具体的な内容は以下の通りである。(1)について、日本で行われた卓球の公式試合、約50試合のプレー内容について、得点の系列、得点の入り方(例;どのようなミスで得点が入ったのか、ミスの内容の分類)など、プレイヤーのリスク態度と関係すると想定されるプレー内容に関するアノテーションの付与を行った。付与したアノテーションデータはアノテーター間で、単純なミスを除いてはほぼ100%の一致率となり、客観性を持ったアノテーションの付与が達成できた。(2)について、実際の卓球の試合の動画から、プレイヤーのプレースタイルの変化を自動で抽出することを目的として、骨格データを抽出するためのアルゴリズムの開発を行った。試合中、プレイヤーは目まぐるしく移動し、また審判をはじめとして、プレイヤーが陰に隠れてしまう場面も少なからず存在するために、試合中、常にきれいな骨格データが取得できるというわけではない。しかし、分析に十分に活用できるようにするために、アルゴリズムの改善に現在も取り組んでいる。(3)について、卓球ロボットの機能向上を目指すために、機能向上を目指した設計について再考を進めている。この点については(1)、(2)と連動する内容で、現在も進行中の内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、これまで行われてこなかった行動経済学的な視点に基づいて、インタラクションを伴うスポーツの分析を行うという新たな試みを実施している。そのために、分析のフレームワークに合わせたデータを取得していく必要がある。現時点で、試合のアノテーション付与、また動画解析という機械学習的手法、2つの方法を用いてデータ構築を行っている。アノテーション付与については、アノテーター間で高い一致率が得られており、本研究が提案するアノテーション手続きによって客観性が高いデータが得られる可能性が示されている。また実際の卓球の試合の動画解析については非常に精度の高い骨格データが取得できるアルゴリズムの開発が順調に進んでいる。これらについては当初予定していたよりも順調に進捗している。
当初の予定では、プレイヤーの動作の測定実験を実施する予定であった。新型コロナウイルス蔓延の影響により現時点までに測定はできていないが、実験の準備は順調に進んでいる。
このように、分析フレームワークに合わせたデータ構築は当初の予定よりも順調に進んでいる。測定実験についてはまだ実施ができていないが、準備については順調に進んでいるために、全体としては、概ね順調に研究計画が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下に記す3点について研究を進める。
1点目として、エージェントシミュレーションに基づいて、プレイヤーのリスク態度の変化の推定とミスが生じる時のパターンの解明を目指す。特に、ギャンブルにおけるリスク態度(リスク志向的、または回避的)と合理的選択(期待値が大きい選択肢を選べるか)の関係を参考にした上で、プレイヤーのミスのパターンと得点系列(負けている場面は損失場面、勝っている場面は利得場面と見なす)の関係からプレイヤーのプレースタイル(攻撃的あるいは守備的)を推定し、プレースタイルとミスの関係を明らかにする。具体的には、エージェント間のインタラクションを仮定した計算モデルを構築し、どのような場面でミスを生み出しやすいプレースタイルになってしまいがちであるか(例:負けている時に、攻撃的になりすぎるとミスが生まれやすい)について、計算論的視点に基づいて解明を目指す。2点目として、卓球のプレーを実験的に測定し、身体動作の変化とプレースタイルの変化の関係について解明を目指す。例えば、プレイヤーとなる実験参加者にプレー中に考えていたことについてインタビューを行い、意識レベルでプレースタイルにどのような変化があったのか、それらは身体レベルでどのような形で表出しているのか、またそれによってどのようなプレー中のミスに繋がりやすいのかについて分析を行う。3点目として、1点目と2点目で明らかにしたプレースタイルとミスの関係に基づいて、ミスが生じやすい場面でプレースタイルを矯正するためのコーチングロボットを構築するためのフレームワークとして、リスク態度が有効でかつ応用可能性を持った指標となりうるのか検証を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた卓球のプレーの測定実験が新型コロナウイルスの蔓延により実施ができなかったために、次年度使用額が発生した。
当該実験は2022年度に実施することとしたため、実験協力者、補助者への謝金として使用する。
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