2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18570
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
菅原 翔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (80723428)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 脳脊髄機能連間 / 身体運動 / 運動準備活動 / 機能的磁気共鳴画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドーパミン含有細胞が集まる腹側中脳は一次運動野を経由して脊髄へ投射する。この神経経路の機能的な意義は一体何なのか?我々のこれまでの研究で、腹側中脳と一次運動野を結ぶ経路が「意欲と身体運動へ変換する」機能と関連することが明らかになった。解剖学的経路を考えれば、意欲の情報は運動準備時に脊髄まで到達し、身体運動をより直接的に左右しているのではないか?この問いに回答を与えるため、「腹側中脳-一次運動野-脊髄を結ぶ神経経路が、意欲を身体運動へ変換する神経基盤である」ことを、課題遂行中に機能的MRIによる脳脊髄同時計測によって立証する。 2022年度は外部参加者からのデータ収集をより効率的に進めるため、東京工業大学のMRI装置で脳脊髄同時fMRI計測ができる環境を確立した。新たに30名の健常成人を対象として実験を実施し、腹側中脳と一次運動野に加えて、頸髄6/7節での準備活動を再び描出することに成功した。2021年度に東京都立松沢病院で17名を対象に得た知見を再現する成果であり、脳脊髄での運動準備活動を描出する手法を確立したと言える。2021年度に得た成果はパリで開催されたFENS2022で発表した。 また、以前取得していた脳脊髄同時拡散協調MRIデータを用いて、脳脊髄経路の解剖学的結合について定量的分析を実施した。複数の皮質運動関連領域が皮質脊髄路の起源であることをヒトにおいても確認し、起始領域ごとの脊髄への投射比率を推定することに成功した。本成果は国内外の学会で発表され、Neuroscience Research誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では3年間で2つの機能的MRI実験を実施する計画である。感染症の蔓延により外部参加者の病院施設へ立ち入りが制限されたが、研究専用MRIへ脳脊髄同時計測環境を移植し、1つ目の実験を滞りなく実行することができた。2つの施設での計測データに基づき、「運動準備時に腹側中脳-一次運動野-脊髄が活動する」という仮説を再現性を持って立証することに成功した。2つ目の実験で用いる金銭的報酬による意欲状態の操作は、すでに2つの先行研究で使用した実績があり、実験を開始する準備が整っている。これらの事実に基づき、2022年度の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
東京工業大学のMRI装置を使用することで、外部参加者による実験を効率的に進めることが可能となった。2023年度は、運動準備時に金銭的報酬を予期させることで意欲水準を変化させ、運動時の脊髄活動が意欲による修飾を受けるという仮説を実証する実験2を実施する。すでに実験準備は整っているため、前期中にもデータ収集を完了することができると考えている。実験1で得られた成果は国際学術誌へ投稿するための準備を進めており、2023年度中の掲載を目指す。
|
Causes of Carryover |
当初は解析用ワークステーションを新規購入予定であったが、既存の計算環境で十分であることが判明したため購入を見送った。脊髄fMRIの専門家であるRobert Barry博士と共同研究を行うことが決定し、次年度に打ち合わせとSpinal Cord Workshopへの参加のためにMassachusetts General Hospitalへ訪問する。昨今の国際情勢により海外出張経費が高騰しているため、出張旅費として1000千円を使用する計画である。さらに残りの次年度使用額は、解析を効率的に進めるため、解析を補助する研究協力者への謝金とする。
|
Research Products
(4 results)