2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K18576
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 啓史 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50223839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩木 耕平 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (00750598)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 深谷圏 / WKB解析 / Floer理論 / Stokes現象 / シンプレクティック幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
境界付きリーマン面からシンプレクティック多様体への安定写像について、その貼り合わせ写像の指数減衰評価に関する結果を証明した論文が、長いレフェリー過程に辛抱強く対応した結果ようやく出版許諾を得た。これは本課題で扱う深谷圏の幾何学的構成およびその応用の際に基礎となる重要な結果のひとつである。 並行して、Hamiltonian Floer理論におけるFloerコホモロジーを定める線形Kシステムの幾何学的実現を、Morse-Bottの一般的な状況で遂行し論文にまとめた。系としてMorse-Bottの状況でBetti数に関するArnold予想が従う。ここでは2020年に出版された研究代表者とその共同研究者たちによるリサーチモノグラフ`Kuranishi structures and virtual fundamental chains', (Springer)の結果が有効に用いられ、特にouter collarを用いてファイバー積とcompatibleな倉西構造の族が構成されている。これらは、深谷賢治氏、Yong-Guen Oh氏、小野薫氏と研究代表者との共同研究の結果である。 深谷圏の解析的研究については、予備的考察として研究分担者と議論を重ね、分担者がかつてその共同研究者と得ていた複素射影直線に付随する2階の量子微分方程式に対する完全WKB解析の結果を、ある高次元シンプレクティック多様体に付随して現れる高階の量子微分方程式に対して完全WKB解析を詳細に実行し一般化した。そこで新しい知見を得ることができた。高階の微分方程式に対する完全WKB解析の一般理論は未だ確立していないが、シンプレクティック幾何に付随して現れるある種の高階量子微分方程式に対しては、完全WKB解析が機能する可能性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に萌芽的研究を遂行する場合、直接対面で議論することが有効であろうと考えられるが、COVID19のコロナ禍の中にあって、分担者と直接対面で研究議論を行う機会を作ることが難しい一年間であった。しかし、本課題の支援により少ない機会ではあったものの、分担者と直接議論することができたことは実効的に有意義であった。その中で、分担者たちによる複素射影直線の場合に付随するある2階の量子微分方程式に対する完全WKB解析の既知の結果を、高次元化する目的で詳細な解析を実行することができた。ある特別な具体例についてではあるが、高階の量子微分方程式に対する完全WKB解析についての新しい知見が得られたことは成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
高次元シンプレクティック多様体に付随する高階量子微分方程式の完全WKB解析をさらに詳しく研究する。例えば、同変パラメーターを導入することで、新しい知見をより深めていく。COVID19の感染状況は本課題遂行にあたり懸念材料であり、その状況にも大きく依存するが、研究分担者との連携を密に行い、可能な限り対面で詳細な議論を行うことを目指したい。また、当該課題に関係する研究者とも連携し議論を重なることで、研究の可能性を広げていく予定である。
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Causes of Carryover |
オミクロン株等COVID-19の新しい変種の出現により、未だコロナ禍は収束せず、そのため国内外の出張に制限がかかり予定していた旅費経費の支出計画に変更を強いられた。来年度は、コロナの状況が改善することにより国内外の移動の制限が緩和されることを期待し、対面研究打ち合わせあるいは対面研究会のために自らあるいは研究者招聘のために旅費を積極的に活用して、リモートでは達成しにくい詳しい研究議論を行う計画である。
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