2021 Fiscal Year Research-status Report
Evolution equations with the coexistence of fractional derivatives and nonlinear structures -perturbation theory and asymptotic analysis-
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21K18581
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 非整数階微分 / 発展方程式 / 非線形問題 / 摂動理論 / 解の漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究代表者が 2019 年に Israel J. Math. 誌から発表したヒルベルト空間に於ける非整数階時間微分作用素を伴う semiconvex なエネルギー汎関数に対する勾配作用素によって支配される発展方程式(以下ではその解を fractional gradient flow と呼ぶ)の理論に対する摂動論構築への試みとして、まずは semiconvex なクラスには入らないエネルギー汎関数に対する fractional gradient flow の構成に取り組んだ。この研究は研究代表者の指導学生である中島慶人氏との共同研究である。この課題解決への第一歩として、凸性は仮定しないがエネルギー空間上で強圧的になる(特に下から有界になる)ようなエネルギー汎関数に対する fractional gradient flow の構成に成功した。ここでは下から有界になるようなエネルギー汎関数を扱っているため、構成した fractional gradient flow は時間大域的に存在する。この結果は非整数階時間偏微分作用素と p-Laplacian をはじめとする退化・特異拡散作用素を伴う爆発項付きの放物型方程式に応用可能であり、特に爆発項の増大度が拡散項の増大度を下回るケース(いわゆる subprincipal case)に於いて時間大域解の存在を保証する。さらに強圧性を仮定せずにエネルギー汎関数が上下に非有界になるようなケースへの拡張にも取り組み、その時間局所解の存在の証明に向けた見通しが大方立った。細部のチェックや仮定の一般化など抽象論構築に伴う作業はまだ多く残るが、前述の非整数階時間微分を伴う放物型方程式に対して、特に爆発項の増大度が拡散項の増大度を越えるようなケース(すなわち superprincipal case)に於いて時間局所解の存在を保証することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間中に予定されていた摂動論の構築に関しては、semiconvex ではないエネルギー汎関数に対する fractional gradient flow の構成に対して大方の見通しがついており、問題解決の観点では当初計画以上に順調なペースと言える。抽象論であるため仮定の置き方など慎重に検討が必要であるため、成果の取りまとめにはもう少し時間が必要であるため、計画全体としては概ね順調に進展していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず今回得られた結果を精査し、より多くの問題に効率的に適用可能な抽象論の構築を目指す。また実際にここでの結果を非整数階時間偏微分作用素を伴う偏微分方程式に適用することで、その時間大域/局所解の存在を証明する。さらにそれに基づいて同偏微分方程式の解の漸近挙動の解析に取り組む。この問題は抽象および具体の両側面から接近する。すなわち基本的な解の漸近挙動を決定することのできる抽象論の構築、さらに抽象論で抽出する構造だけでは決定し切れないような解の挙動を個別解析によって明らかにする。特に解の爆発現象や時間大域解の存在に対する判定条件の解明、時間大域解の有界性、さらに定常解への(全列)収束性がテーマとなる。これらの課題も指導学生の中島氏との共同研究として実施する。2021年度は新型コロナの影響が大きく、国内での研究発表の機会もやや限定的だった。さらに海外での成果発表の機会や関連分野の研究者との情報交換はオンラインを除くと全く行えなかった。この点は2022年度に大きく改善されることを期待したい。いずれにせよできるものから実施する方針で、国内外の関連分野の研究者の招聘・訪問を適宜実施していく。また2021年度は出張ができなかった一方で関連する研究理論の取りまとめを行い、大学院生のアルバイトによるサーベイ作成などにも取り組んだ。この経験を活かして今後も関連分野のサーベイ作成などを行い、少しでも近接分野全体の発展に貢献したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で東北大学の渡航方針から海外渡航ができない状態が長らく続いた。そのため海外での成果発表や関連分野の研究者との研究情報の交換を目的とした招聘/訪問はともにできない状態が続いた。そのため当初予定されていた渡航予算の使用ができず、保留されている。2022年に入り日本国政府の権益措置に関する方針が見直され、再入国時の長期隔離措置を回避することが可能になり、さらに相手国側の水際対策も大幅に簡略化されたため、2022年度は保留されていた渡航を計画したい。一方、新型コロナの問題が完全に解決されたわけではないため、まだまだ困難が伴う状況である。ケースごとに状況を判断し、実施可能なものから実施する方針で予算の使用を行いたい。
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