2023 Fiscal Year Research-status Report
q-指数関数と一般化三角関数を繋ぐオイラー型関係式
Project/Area Number |
21K18582
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪奥 倫左 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50624607)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 非線形スケール変換 / q-対数関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
オイラー型関係式と関連して,臨界型関数不等式や関連する変分問題を劣臨界の連続極限として導出する研究を行っている.1年目,2年目の研究において,集中レベルの連続性を持つような劣臨界近似の構成に成功し,得られた結果はProceedings AMSから出版済みである.さらに,この劣臨界近似をより強い収束性で示すために,Gamma--Convergenceの証明を試み,劣臨界指数に関する不等式の一様有界性の証明を多方面から検証した.証明は完了していないものの,Moserによる原証明,Nakanishiらによるその精密化の証明に立ち返ることで,汎関数の構造に起因する困難を伴うことを確認した. また,本研究の主題であるオイラー型関係式を探るため,非線形固有値問題との関連性を考察した.これと関連して,高階Sobolev不等式の最良定数,集中レベル,最小化関数の劣臨界近似可能性について考察した.そのためにも,元となる高階Sobolev不等式の最良定数や最小化関数を求める必要があるが,これがHilbert空間の設定でしか得られていないことを突き止めた.連続パラメータに対する劣臨界近似として臨界問題を捉えるためにも,L^p空間の設定において最良定数とその最小化関数を求める必要がある.こちらも最終的な結論には至っていないものの,既存のTalenti型関数が機能しないことを確認するとともに,その他の特殊関数の適用可能性について精査した.明示的な値が求まらないまでも,近似的な表現の可能性や,可積分指数を空間次元に近づけることによる漸近評価の導出など,多面的な解析を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標には辿り着いていないものの,関連する臨界問題の知見を順調に蓄積している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,q指数関数を劣臨界近似関数として持つような臨界問題について解析を行ってきた.q指数関数とq三角関数をつなぎ合わるためには,もう一方のq三角関数に対する知見を深める必要がある.本研究では背後にある微分方程式の観点からこれを考察するため,q三角関数の一つの表現である非線形固有値問題について研究を進める.また,並行して,これまでに研究を進めてきたq指数関数と関連する臨界問題群についても考察を深め,両q関数の背後にある微分方程式や,対応する変分構造,その発露である関数不等式の最良定数や最小化関数の観点から両q関数の関連性を明らかにすることを試みる.
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Causes of Carryover |
当初予定よりも,オイラー型関係式を得るための状況証拠を得るための研究に時間を要している.その理由は,偏微分方程式の臨界問題に対する劣臨界近似としてq指数関数が自然と現れることが明らかになるなど,q関数の背後には微分方程式の構造的な豊かさが隠れていることが明らかとなったため,考察すべき対象が当初予定よりも広がったためである.次年度にはq指数関数と関連する臨界問題を引き続き精査するとともに,q三角関数の背後にある非線形固有値問題の解析を進めていく.具体的には,L^2に限らないL^p版の高階Sobolev不等式の最良定数について理解を深めるとともに,これらと非線形固有値問題の関連性を明らかにしていく.
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