2021 Fiscal Year Research-status Report
精子アクティブマターによる生体内集団動態の物理機構
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21K18601
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 剛志 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (10620198)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 精子集団運動 / 生体イメージング / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物において精細管から誕生した精子は、精巣上体の上皮(精巣上体管)の管腔内に運ばれ運動能を獲得する。この過程は、精子の生殖細胞としての機能獲得に極めて重要であるにもかかわらず、生体内でどのように精子が振る舞うのかについては全く未解明であった。 本研究の目的は、1)生体イメージング計測と2)数理モデリングによる理論解析を通して、精巣上体内の精子流れを明らかにし、その形成メカニズムを解明することである。本目的の達成は、新たなアクティブマター生命現象の原理の理解につながるだけでなく、生殖生物学・再生医学を含む基礎科学分野に影響を与えることが期待される。 2021年度は計画通り、マウスを用いて生体内および生体外の両実験系におけるイメージング法の確立と精子集団運動の特徴づけを行なった。特に、マウスを生かした状態で組織深部を顕微鏡観察する生体イメージング法の確立に注力した。多光子顕微鏡を用いた生体イメージングにより精巣上体管内の精子個々の運動の詳細な観察を行なった。その結果、精巣上体内でダイナミックな精子集団の流れ場が形成されていることを見出した。本研究をさらに推進することで、生殖生物学における新規現象の理解を深めることのみならず、非平衡物理学など他の学術領域に新たな研究題材を提供できることが期待される。本研究を通して得られた知見は2報の総説(査読付き)として発表した。また、生体内精子のイメージング法を基にした論文は投稿審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マウスを用いた生体イメージング法の確立と生体内精子流れ場の計測を主な計画とした。麻酔下で陰嚢を切開し、血流を保った状態で精巣上体を体外に引き出し、倒立型二光子顕微鏡を用いて組織深部を観察する生体イメージングシステムを確立した。これにより、精巣上体内の精子および精巣上体管の時系列画像を取得することに成功した。また、遺伝学的・薬理学的に、能動的な精子の鞭毛運動や精巣上体管の拍動を阻害する実験系を新たに構築した。阻害時における生体内精子流れの時系列画像も取得した。画像解析により渦度などの特徴量を抽出し、精子集団流れ場を定量的に特徴づける一連の解析システムを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、得られたデータを参考にし、数理モデリングを行う予定である。流れ場となる精巣上体管内腔の寸法や管拍動の頻度など、取得した各種計測データを取り入れた数値計算を行うことで、観察された精子集団流れ場を形成するための十分条件を明らかにする。さらに、精巣上体内で精子ダイナミクスの様相が大きく変わる事実に着目し、この変化が引き起こされるための細胞集団運動機構についての理解を深める。
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