2021 Fiscal Year Research-status Report
Application of non-contact heat transport measurement by thermoreflectance method to condensed matter research
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21K18603
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 英幸 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 助教 (10759989)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 熱伝導測定 / サーモリフレクタンス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱工学分野で近年確立しつつあるサーモリフレクタンス(TR)法を、低温・強磁場における熱伝導率・熱磁気効果の測定に応用する。非接触で微小試料に対応できるという強みを、量子スピン鎖や量子液晶状態などにおける異方的準粒子ダイナミクスの研究に活かす。 TR法では測定試料表面に金薄膜を蒸着し、表面温度を反射率情報に変換するトランスデューサーとして用いる。まず、金が良く吸収する波長帯のレーザー(pumpレーザー)を強度変調して照射する。これにより表面には温度の異なる領域が同心円状に広がる、“温度波”が生じる。この温度波の位相遅れの周波数依存性から物質の熱伝導率の情報を抽出する。 初年度はまず室温環境でポンプ光波長488 nm, プローブ光532nmのレーザーを用いて周波数領域サーモリフレクタンス法の光学系を構成した。将来的に低温強磁場中への測定に活用することを念頭に、ファイバーと自由空間のハイブリッドの光学系とした。それぞれのレーザーからの出力は一旦シングルモードファイバーに導入したあと、波長分割多重カプラで結合し、光路が揃ったガウシアンビームとして再度自由空間に出射される。その後、ビーム径を一度広げた後、試料表面に集光される。シリンドリカルレンズにより楕円ビームスポットの整形・回転機構も取り入れた。解析に必要なビームスポット径はナイフエッジ法により評価を行えるようにした。 試料作製のために、研磨装置を作製した。また、金を成膜するためのスパッタ装置を導入した。 これらの準備の後、ガラス及びシリコンウエハの熱拡散を計測したところ、既知の値と良く一致する結果が得られ、測定系の精度が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始直前に研究棟の改修工事が決まり、実験室の一時移転を余儀なくされたために、まだ超伝導磁石を使用した低温での実験ができていない。 一方で、室温における光学系のテストはスムーズに進んだ。ファイバーを使用した光学系のため、自由空間-ファイバー界面での結合ロスの影響を懸念していたが、試料表面に温度波を生じさせるための十分なパワーが得られることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験棟の改修工事が終了したので、光学系の再移転のち、超伝導磁石の立ち上げを含めた低温測定系の整備を迅速に進める。クライオスタット挿入用のプローブを作製と、前年度室温で構築したナイフエッジ法を低温環境で行うための試料位置制御機構の開発を行う必要がある。 その後試料の準備ができ次第、低温・強磁場中での微小試料・薄膜試料の非接触熱伝導測定や量子スピン鎖磁性体の測定を開始する。また、試料の面内回転とスポットの楕円率制御から異方的熱伝導やホール成分を抽出する具体的な解析手法について検討する。
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