2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of giant-shell quasi-type-II core-shell quantum dot scintillators
Project/Area Number |
21K18612
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佃 諭志 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (00451633)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 量子ドット / シンチレータ / コアシェル構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、巨大シェルを有する準Type-IIのコアシェル半導体量子ドット用い高効率なシンチレータ材料を開発することを目的とする。半導体量子ドットは、量子サイズ効果により発光波長を変えることができる材料であり、ディスプレイや蛍光マーカー等の研究が盛んに行われている。フォトルミネッセンスでは、表面をワイドバンドギャップ半導体で被覆したType-I型のコアシェル構造が主に用いられる。しかしType-I型量子ドットをシンチレータ材料に適用した場合、コア内でバイエキシトンやトリオンが生成し、それに伴うオージェ再結合過程や表面トラップ準位に起因した無輻射放射過程の確率が大幅に増加するためシンチレーション光の発光効率は低い。この問題を解決するために、既存のType-I型のようにコア部で放射線の吸収と発光を完結するのではなく、シェルで放射線を吸収し、コアで発光する準Type-IIコアシェル構造に着目した。特にシェルを十分に厚くした巨大シェルを作成することで、十分な放射線阻止能を有する「放射線吸収材」として作用することが見込まれる。令和3年度は、準Type-IIのコアシェル量子ドットであるCdSe/CdS量子ドットの合成に取り組んだ。反応温度及び反応時間を制御することでCdSe量子ドットの粒子サイズの制御法とCdS原料の滴下量を変えることでCdSe量子ドットの表面に形成されるCdSシェルの厚さを制御する手法を確立した。また合成系をスケールアップすることでCdSe/CdS量子ドットの大量合成プロセスも確立した。合成したCdSe/CdS量子ドットはType-II型の光学特性を示すこと、及び放射線源に対してシンチレータ光を発することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新たなシンチレータ材料として巨大シェルを有する準Type-II型のコアシェル半導体量子ドットに注目し高効率なシンチレータ材料を開発することを目的としている。令和3年度は、コアとなるCdSe量子ドットの合成でサイズ制御、及びCdSe量子ドット表面へのCdSシェルの合成とシェル厚の制御法について取り組んだ。コロイダル量子ドット合成法であるホットソープ法によりCdSe量子ドットの合成を行い直径3~6nmのCdSe量子ドットを合成した。また量子サイズ効果により、吸収・発光波長を可視光領域で制御できることも確認された。合成したCdSe量子ドットを精製後、溶媒に再分散させ、CdとS原料をシリンジポンプを用い一定速度で滴下することでCdSシェルの形成を行った。滴下量の増加に従いCdSシェルがCdSe量子ドット表面で成長していき、最大で4nmの厚いCdSシェルを形成することに成功した。巨大シェルを有する直径10.9nmのCdSe/CdSコアシェル量子ドット(コア直径3.5nm)では、吸収のピーク波長が614nmで発光のピーク波長が630nmの赤色のスペクトル幅が狭いシャープな発光を示した。また、巨大なシェルに起因した短波長側の吸収も観察され、大きなストークスシフトを示す典型的な準Tyep-IIコアシェル量子ドットの挙動も確認できた。上記の合成法をスケールアップすることでハンドリング可能な量のCdSe/CdS量子ドットを生成するプロセスも確立した。得られたCdSe/CdS量子ドット粉末を用い、X線及びγ線照射下での光学特性評価を行った結果、シンチレータ光の発光が観察され、この材料がシンチレータ材料として利用できることを明らかとした。 以上のように、CdSe/CdS量子ドットの合成法とシンチレータ光の評価法が確立できており、研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はCdSe/CdSコアシェル量子ドットの合成に成功し、また大量合成プロセスに拡張することもできた。粉末状のサンプルを得ることができるため、シンチレータ光の評価を感度良く測定できるところまで順調に進んでいる。令和4年度は、量子ドットが量子サイズとシェルの厚さによって光学ギャップを変調できることに注目し、シンチレータ光を効率よく発することができる最適なサイズを探る。具体的には、まずCdSeコアを直径3nm程度に固定し、シェルの厚さを変化させた時のシンチレータ光の感度を測定する。適切なコアとシェルのサイズ比が明らかとなった後、コアの粒径を変化させ、量子サイズ効果により発光波長をシフトさせることで、ディテクターの感度が最も高い発光波長へと調整を行う。 また、量子ドットは、量子サイズ効果とバルクのバンドギャップの選定により発光波長を任意に選択可能である。CdSe/CdSコアシェル量子ドットは可視―近紫外領域で発光するシンチレータを想定して開発しているが、CdTe/ZnSeコアシェル量子ドットを合成し、近赤外-赤外領域で使用できるシンチレータ材料の開発も行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が東北大学から静岡理工科大学に異動するため、新しい研究環境下で本研究を継続するのに必要な試薬・消耗品を次年度に新たに購入する必要が生じたため。 次年度に繰り越した予算は、合成・測定に必要な試薬、フラスコなどのガラス器具、ガスラインの消耗品等の購入に使用する予定である。
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