2021 Fiscal Year Research-status Report
外太陽系氷天体クライオプラズマ環境シミュレーターの創成
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21K18614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺嶋 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30176911)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | クライオプラズマ / 深宇宙 / 外太陽系 / 氷惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2021度は、 (1)実験システムの改良(作動環境圧力制御の自動化、および、新規質量分析装置の導入など)を行った。 (2)またシミュレーション実験を通じて、実験ノウハウの蓄積を行った。例えば、従来見出していた知見、すなわち、”CH3OH/H2Oの氷に85Kでクライオプラズマを照射すると、極低温でのみ安定した赤みを帯びた色が生成される。”ことの再現性の欠如に関して検討し、その原因が、プラズマ条件、取り分け、微小の異常放電が主な原因であることを膨大な追実験から見出し、問題点の解決を図った。その結果、従来の我々の主張、すなわち、温度の高い太陽の近くに赤色の天体が存在しないことの新たな説明になる可能性を再確認するものである。さらにまた、この赤みを帯びた物質の速度論的解析により、~500nmで吸収する一次生成物も明らかになった。低温プラズマを照射した際の一次生成物の消失の正の温度依存性は、励起されたプラズマ種と赤みを帯びた物質との相互作用が、赤みを帯びた物質の破壊につながることを示している。これらの実験結果・解析結果に関して、実験結果の再現性のチェック、および、データー解析の精緻化が達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置システムの改良(自動圧力制御システムの導入、質量分析装置の高性能化)も終わり、また、実験・解析ノウハウの向上(プラズマア発生系などの再現性・安定性の向上、実験条件の最適化など)も進み2年度目の本格的な研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、主に、(A)環境シミュレーターの創製 で、装置の改良・開発、実験・解析ノウハウの蓄積を行ってきた。最終年度の今年度は、必要に応じて(A)さらなる実験装置システムや解析法の改良を行うよともに、(B) シミュレーション、実験、および反応機構の解析・理解を進める。具体的には、極低温の模擬環境における物理・化学過程のメカニズムを解明し、クライオプラズマの効果を評価するため、①赤外分光・質量分析などによる反応中間体や生成物の同定、 (2) 熱力学的、速度論解析(実験、計算シミュレーション)を行う。模擬環境の物理的パラメータ(例:温度、圧力、エネルギー供給)を操作し、速度定数や活性化エネルギーなどの熱力学的、速度論的データを測定し、反応の雰囲気依存性を理解する。(A)、(B)を通して生じた現象を宇宙の化学・物理現象と比較し、宇宙・生命の起源を理解し、今後の生命活動の指針に貢献する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた大学院生への謝金などが、想定してい大学院生の退学により不要になったため。研究成果公表のための論文出版代などに使用する予定である。
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