2022 Fiscal Year Annual Research Report
外太陽系氷天体クライオプラズマ環境シミュレーターの創成
Project/Area Number |
21K18614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺嶋 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30176911)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | クライオプラズマ / 深宇宙 / 外太陽系 / 氷惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる今年度は、昨年度に整備した実験系(クライオプラズマ環境の安定的な長時間の実現、質量分析系・赤外吸収分光系の導入)と測十分な測定・解析ノウハウを駆使して、主に低温でのみ安定な赤色物質群のin-situでの赤外吸収分光測定を行った。誘電体バリア放電クライオプラズマ発生用電極として、メッシュ状の銅電極を上部電極に用いフッ化カルシウムCaF2ガラスを誘電体として用いた。雰囲気の冷却過程(冷却速度:0.6 K/min.)において、下部電極上に配置したCH3OH/H2O混合液体の蒸発を経てCH3OH/H2O混合氷を形成した。下部電極にはAuを用いた。85 Kまでの冷却過程の後、8×103 PaのHe/N2(3%)混合ガス中でクライオプラズマ照射(10 kHz正弦波、ピーク電圧:3.0 kV)を12時間行った。赤色に寄与すると思われる物質のIRスペクトルを、CH3OH/H2O氷へのクライオプラズマ照射による生成過程と、その後の昇温での消失過程で得ることができた。赤色の生成過程では、クライオプラズマ照射時間の増加に伴って反応物のCH3OH、H2Oとは異なるピークの増加が観測された。赤色が消失した120 Kから150 Kでは、三重結合または累積二重結合によるものと考えられる2170 cm-1と、環を持つカルボニル基によるものと考えられる1790 cm -1のピークの減少が見られた。これらの官能基を含む物質が低温でのみ安定な赤色現象に関与していると考えられる。本研究で推定された官能基に着目することが、外太陽系内の氷惑星を主な舞台とした赤色分布を説明する物質の同定の一助となる可能性に繋がるであろう。クライオプラズマ宇宙物質科学の創成の第一歩となる本研究の今後の新たな展開に大いに期待する。
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