2022 Fiscal Year Research-status Report
ヘリウム誘起金属ファズ(綿毛)への複合化合物積層による高機能性光応答の発現
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21K18617
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 信 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00455297)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ヘリウム / プラズマ / ファズ / 光電気化学 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリウム(He)プラズマ処理は、表面にナノ構造を形成し、表面の化学的性質を変化させる多用途なツールである可能性がある。本研究では、バナジウム(V)薄膜をヘリウムプラズマに曝し、モルフォロジーと表面特性の変化を調査した。表面モルフォロジーを変化させることができる照射条件を特定した。ヘリウムプラズマ照射中に、試料カバーのモリブデン(Mo)が堆積し、複合的なナノ構造光電極(V2O5/MoO3)の形成が起こった。プラズマ処理により、光電気化学(PEC)性能は3倍に向上した。表面積の増加に加え、異種・複合構造、酸素空孔、V6O13等の還元酸化物などの形成により、電荷移動抵抗が減少し、PEC性能の向上に寄与していることが明らかになった。本研究は、PEC水分解用電極の性能を向上させるために、Heプラズマを利用することで様々な道が開けることを示唆するものとなった。Heプラズマ照射のワンステッププロセスで、表面モルフォロジーの制御、複合材料の形成、空孔の誘導が可能であることがわかった。加えて、直線型プラズマ装置NAGDIS-IIにおいて、厚さ100nmのタングステン薄膜に高密度ヘリウムプラズマを照射し、繊維状ナノ構造(FN)を合成した。ヘリウムプラズマ照射後、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡で試料断面を観察した。短い照射時間により、ナノ構造層の厚さが大きく増加することが示された。また、ヘリウムプラズマに短時間曝露しても、光吸収率は高いままであった。繊維状ナノ構造体を生成するための既存の作成方法では、照射時間が非常に長くなるが、この薄膜の使用により、ナノ構造成長の処理時間を短縮することができ、商業生産に有益であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘリウムプラズマを利用して,バナジウムとモリブデンの共堆積ナノ構造層の作製に成功し,光電極の性能の向上が明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
他の材料(酸化鉄)のナノ構造体の光電極性能の評価を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
V2O5の光電極性能の向上に与えるMoの堆積効果の影響を理解するために光電気化学実験及びXRD,XPS等の解析に集中する必要があった。そのため,スパッタリングを用いた堆積実験を2023年度に集中して実施することとした。
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Research Products
(6 results)