2022 Fiscal Year Research-status Report
暗黒物質Axion探索を目指した,アクシオン類似粒子・暗黒光子の探索
Project/Area Number |
21K18621
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岸本 康宏 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (30374911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 泉 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20294142)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / アクシオン / 暗黒光子 / マイクロ波共振空洞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,常温,磁場無しの環境で暗黒物質暗黒光子の探索を実施すべく,測定系を構築し,実際に探索を行った.測定系では,アンプのゲインの変動が一番大きな系統誤差となると予想されたため,アッテネータを介してアンプに雑音源(ガンダイオード)を定期的に導入することで,アンプの経時変化の影響を最小限に止める様,自動化した測定系を用いた.しかし探索では,温度によるアンプのゲインに変動が見られたため,装置系を3重のカーテンの中に収め,更に温度計を設置し,温度の変動の大きい場合の系統誤差抑制に努めるなどの工夫が必要であった.今回の測定では,空洞のQ値を低く抑え,その代わりに一度の測定で広い周波数領域を長時間測定するセットアップで実験を行った.探索領域は,4.955 から4.972 MHz の範囲で,ある1つ周波数領域の積分時間は約12時間とした.現在このデータを解析しているところである.解析では,アンプのゲイン変動はあったが,定期的で頻繁な校正作業の結果,系統誤差を抑制することができた.これの意味するところは,長時間(今回の設定では約12時間)の積分時間を設定した場合にあっても,適切な校正作業によって,感度が向上することが確認された. また,今回測定作業が成功裏に終了したことを受け,必要最小限のデータ収集系が明確化された.すなわち,低温下,高磁場下という条件下で稼働すべき要素部品を厳選することが出来る様になった.この結果,現在,問題となるのはマイクロ波スイッチ部品1つだけであることが分かった.このマイクロ波スイッチであるが,磁場を使わず,クライオスタット外部から機械的にスイッチを使用できるよう設計を行っている.これによって,強磁場を印加して,最終目的であるアクシオン実験が一気に可能となるため,この完成を急いでいる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,宇宙暗黒物質の謎の解明に向け,マイクロ波領域での信号が見込まれる暗黒光子・暗黒物質について,次の3ステップで研究を実施することを計画している.第一段階: 常温,磁場無しの環境で暗黒物質暗黒光子の探索を行う.第二段階:低温(4K)に装置を設置し,磁場印加しない環境で,暗黒物質暗黒光子の探索を行う.第三段階:低温(4K),強磁場(9 T)の環境下で,暗黒物質アクシオン,アクシオン類似粒子(ALPs)の探索を実施する.各段階で,マイクロ波測定技術,低温技術,高磁場工学といった要素を順次取り込むことを考えている.現段階での進捗状況は,第一段階が終了し,取得したデータの取りまとめを行っているとことである.本来であれば,2022度に第二段階に進んでいるべきであったが,2022年夏に,本実験で使用するマグネットがクエンチし,その結果,断熱真空槽にリークが生じ,その修理が12月までかかった.このため,第二段階への準備作業が遅れ,結果として,当初の計画から遅れが生じている.クライオスタットが使用できなかった期間に,高磁場中で稼働するマイクロ波スイッチの開発など高磁場環境への対応を行っており,第二段階から第三段階に必要な準備期間の短期化を図った.現在ではクライオスタットは正常に稼働しており,第二段階の実験を開始するところである.従って,当初計画からの遅れはあるものの,研究期間内に第三段階へ進み,研究目的を完遂できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3つ段階を踏んで実験的研究を行う予定であった.現在,第一段階を終了したところであり,当初予定からの遅れを取り戻すべく,第二段階,即ち,測定装置系をクライオスタットに導入すべく,装置系の改造を進めている.必要な機器や部品は全て購入済みであるため,今後これらをアセンブルすることに注力する.正確なエネルギー較正のためには,50 Ohmの広帯域高周波抵抗を一定温度に制御する必要があり,これがキーとなる要素である. また,研究実績の概要に記した様に,第一段階における測定系構築の実績から,第二段階から第三段階へのステップに必要な要素はマイクロ波スイッチのみであることが判明した.このマイクロ波スイッチは機械的に動作し,低温化での動作が確認されているので,クライオスタット外部からスイッチ部を動作されることができれば,第二段階から第三段階に一度に移行できる.従って,早期に最終目標であるアクシオン,アクシオン類似粒子(ALPs)の探索を開始できるよう研究を進める.
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Causes of Carryover |
2022年夏に,本研究で使用するクライオスタットの断熱真空槽にリークが生じた.その結果12月まで4ヶ月近く実験を行うことができなかった.そのため,当初の予算執行の予定を変更し,2023年度に予算の執行することとした.
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Research Products
(5 results)