2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18631
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
津野 総司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30451834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
武田 彩希 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40736667)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 半導体検出器 / メモリ / SEU |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の目的は、商用のSRAMメモリチップを応用して、荷電粒子に対する新しい放射線検出器を開発することである。昨年度は、単層のSRAMメモリチップの荷電粒子に対する検出効率を測定した。先行研究により、SRAMに印加する動作電圧を大きく下げるとSEUによるビットフリップの確率(つまり、検出効率)が冪乗で上昇することが報告されている。200Mbqのストロンチウム線源を用い、印加電圧を変えながら、SRAMチップに照射を繰り返し、印加電圧に対して、約1%の検出効率を測定した。しかし、1%の検出効率では測定器として機能しない。しかしながら、印加電圧を大きく下げると自然にビットフリップを起こす確率も必然的に増加する事を利用して、印加電圧の代わりに、この自然にビットフリップを起こす事象をノイズと規定し、ノイズに対する検出効率を算出すると、おおよそ、20%まで検出効率が上昇することを確認した。 当該年度は、ノイズに対して、どこまで検出効率が上昇するのか、定量測定を行うため、数度にわたり照射試験を行った。しかしながら、商用のメモリチップを遥に規定外の定電圧領域で動作させるため、チップの個体差や環境変化による影響が非常に大きく、環境制御を改善する処置を行ってきた。 当初の予定では、専用の半導体検出器の設計を行う予定であったが、まずは、多層構造のSRAMチップでも同様の試験を行うことが先決であると判断したため、単層回路で試験をしたものと同様の回路設計を行い、照射試験を繰り返した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究に於ける原理実証試験は、概ね実証したが、当該研究費の使途に関しては、大幅に遅れている。当初の予定では、我々は学術系の半導体プロセスを利用することを目指していたが、昨年度は、予定していたプロセスが延期されため、予定委通り研究費を使用できなかった。一方で、照射試験の結果から、想像以上に環境変化に脆弱であることが分かったので、引き続き単層メモリチップに対する環境依存性を測定し、また、多層構造でもどれほど検出効率が得られるのか、また、どれおど環境耐性が得られるのか、先に検証することにしたため、昨年度は、研究費を使用せず、当該年度に使用することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
単層メモリチップの照射試験の結果から、発熱などによる温度変化や接地対策に大きく影響されることが分かったので、当初予定していた学術系の半導体プロセスの推進を止めて、まずは、多層構造のメモリチップに対して同様の照射試験を行うことにする。
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Causes of Carryover |
単層のSRAMチップに対して、荷電粒子に対する検出効率を測定してきた。当初の予定では、学術系の半導体プロセスに相乗りして、半導体検出器を開発する予定であったが、この学術系プロセスの遅延により、当該年度は、実施できなかった。一方、単層SRAMチップを使った測定でも、予想に反して、温度等による環境変化に測定結果が大きく依存することが分かったため、環境を制御しいた上で、測定を行う必要性が生じた。したがって、学術系プロセスに相乗りして半導体検出器を作成するのは時期尚早と判断し、次年度は、単層構造のSRAMチップではなく、多層構造のSRAMチップで、同様に放射線に対する検出効率を測定することにしたため、当該年度は、予定額を執行できなかった。次年度は、多層構造のSRAMチップで、同様に放射線に対する検出効率を測定するための検出装置を開発する。
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