2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a high radiation tolerant detector with new semiconductor materials.
Project/Area Number |
21K18635
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
外川 学 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50455359)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 半導体検出器 / 放射線耐性 / 重イオンビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、シリコン以外の新素材半導体を用いて、量子イメージング(可視化)に欠かせない半導体検出器(カメラ)の耐放射線能力を飛躍的に上げ、高放射線環境下での量子イメージングに革新を起こすことである。 新素材半導体として国内での素子開発が活発で、世界で初めての検出器開発となる CIGS、AlNの二種を候補とし評価を進める。 本研究期間内ではp-n構造のCIGS、AlN検出器を作り、粒子検出に挑戦する。いずれも3x3程度のピクセルアレイ構造で、容量を後段の読み出しICの条件と合わせるため、100から200 μm角のピクセル構造を考えている。 試作機で厚い空乏層厚は難しいので、重イオンビームによる検出器評価を行う。例えば理研RIBFの錫粒子であると、エネルギー損失が単荷電粒子貫通の2,500倍相当で、薄い空乏層でも十分検出可能である。CIGS太陽電池が元々薄型で作ることを想定しているので、そのままでも重イオンビームを検出できる可能性もあり、重イオン用検出器として開発が進む可能性もある。 初年度はp-n構造のCIGSを製作し、重イオンビーム照射による荷電粒子測定を実施した。重粒子線がん治療装置(HIMAC)において、400 MeV/核子のXeビームを照射し、単Xe粒子の貫通事象の検出に成功した。出力はGEANT4によるシミュレーションと大きな違いはなく、粒子検出器として十分な性能を持つことを明らかにした。また、Xeビーム照射による損傷で出力が低下したが、CIGSの特性である、熱処理による回復も確認し、CIGSが放射線に強い粒子検出器の有力な候補である確証を得た。今後実用に向けて設計、評価を進める。AlNの検出機はまだ準備中であるが、同じく窒化物半導体のGaNのp-n構造でも同様にXeビームの出力を確認し、これらについても評価を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的はCIGS, AlN半導体よるp-n構造が、粒子検出器として動作可能か見極めることを目的とした。特に試作したCIGS検出器は、空乏層(有感領域)の厚みが2ミクロン程度であったが、Xeビームによる単粒子測定が可能で、その出力がGEANT4によるシミュレーションと同程度であった。更に、Xeビーム照射による損傷で出力が低下したが、CIGSの特性である熱処理による回復も確認し。この2点により、CIGS検出器が放射線損傷を回復できる粒子検出器として開発可能であることを示した。AlNの検出機は残念ながらp-n構造製作の目処が立たず、準備中であるが、同じく窒化物半導体のGaNのp-n構造でも評価を行った。これら窒化物半導体はシリコンに比べてワイドギャップで、原子間結合力が強いため、一般的に放射線耐性が高いとされている。同じくXeビームの出力を確認し、シミュレーションによる見積もりと同程度であった。窒化物半導体も検出機として開発可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
CIGS、GaNによる検出器製作の確証を得たので、実際に利用に向けた検出器製作を行う。半導体検出器の重要な要素として、電極構造を微細化することによる位置検出が上がる。これを実現するため、3x3程度のピクセルアレイ、もしくはストリップ電極構造の検出器を試作、評価する。重イオンビームによる照射で位置検出器としての評価を行う。CYRICの陽子ビームを用いて短時間で放射線損傷を与え、その前後を比較することで、放射線耐性を評価する。 また、電極の微細化だけでなく、空乏層を厚くすることで、電子、陽子などの単荷電粒子の測定にも挑戦する。 これらの評価を合わせて検出器の大型化を行い、重イオン実験などの実際の利用に向けた設計を開始する。
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Causes of Carryover |
初年度は試作サンプルにより、粒子検出器としての性能、放射線耐性を評価し、次年度に利用に向けた設計を行う方向に狙いを定めた。初年度の試作サンプルの段階では読み出しチャンネル数も少なく、当研究室で保有している読み出し機器で十分評価可能であったため、そちらでカバーした。次年度製作する設計はよ読み出しチャンネル数も多くなので、設計仕様を決めた後、それらを十分賄える電源を購入する。
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Research Products
(1 results)