2022 Fiscal Year Annual Research Report
Search for unknown processes on molecular evolution in space: photochemical reactions induced by visible light
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21K18639
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (00507535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新家 寛正 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40768983)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 表面プラズモン共鳴 / 可視光 / 光化学反応 / 分子進化 / 地球外環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,固体ヘキサメチレンテトラミン(HMT)への可視光(波長532nm)照射実験を継続した。実験の概要は,ガラス基板上にヘキサメチレンテトラミン水溶液を滴下し,真空条件下で水を昇華させ,固体HMT膜を作成した。そこに出力10ミリワットの532nm可視光レーザーを真空条件下で10日間照射した。その後,ガラス基板からHMTを水で抽出し,抽出液を液体クロマトグラフ―飛行時間型質量分析計で分析した。ガラス反応基板は2種類用意した。一つ目は直径20nm程度の金ナノ粒子を蒸着したもの,もう一つが直径50nm程度の鉄ナノ粒子を蒸着したものである。20nm金粒子上に作成したHMTへの532nmの可視光を照射すると,質量電荷比(m/z)=202.1792(M+H+)に相当する生成物ピークが検出された。ピークエリア比換算では,同化合物の生成量は残存HMT量の8倍に相当した。一方,鉄ナノ粒子上のHMTへの可視光照射後にも同質量電荷比をもつピークが検出されたが,ピークエリア比では残存HMTの1/30であり,金ナノ粒子基板での挙動と大きく異なった。m/z=2012.1792から予想される分子組成は,装置のデータベース上ではC11H23NO2がもっとも一致度が高いが,酸素原子が含まれている可能性は低いため,次に一致度が高いC7H19N7と考えるのが妥当であろう。残念ながら化学種の同定には至らなかったが,金ナノ粒子特有の表面プラズモン共鳴によって,HMTの可視光による光化学反応が進行したのは疑いない。しかし,金ナノ粒子上で光化学反応が進行したとはいえ,実際の宇宙環境では金ナノ粒子の存在は強く期待できないため,その効果は限定的であろう。一方,わずかではあるが鉄ナノ粒子上でも反応が進行したことは,実際の宇宙環境(小惑星上など)での反応の進行が期待できる。
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Research Products
(5 results)