2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of an easy and accurate method for screening diagenetically unaltered carbonate samples
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21K18642
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井龍 康文 東北大学, 理学研究科, 教授 (00250671)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 続成作用 / 変質 / ラマン分光 / XRD分析 / 炭酸塩生物殻 / 酸素同位体比 / 炭素同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,日本近海に生息する現生腕足動物4種に対し,電子線マイクロアナライザー分析法(EPMA)を用いた微量金属元素濃度の解析を実施した.さらに,ラマン分光分析データとの直接比較から,生物源方解石のラマンデータが示す意味を考察した.今回,ラマンデータは,方解石スペクトルに特徴的な5つのピークのうち,最も顕著なv1ピークの中心位置のずれ(ラマンシフト)と半値幅を用いた.EPMAデータとの比較の結果,ラマンシフトはSr/Caと負の相関を示し(r = -0.77),Mg/Caとは中程度の相関を示した(r = -0.55).ラマンシフトの分布は種によって異なり,殻成長速度の大きいT. crosseiはより負に位置し,殻成長速度の小さいB. lucidaはより正に位置したことから,ラマンシフトは殻成長速度と関係し,Sr/Caとの相関は間接的に得られた可能性が高い.これは,殻成長速度以外の生理学的影響(例えば,Mg除去機構)を受けるMg/Caとの相関がより小さいこととも整合的である.半値幅はMg/Ca,Sr/Caと強い正の相関を示し(それぞれr = 0.77,r = 0.91),これは無機方解石での理論や実験結果と合致した.4種のうち最も低い微量元素濃度を示すB. lucidaが明瞭に低い半値幅を示すことからも,半値幅は殻方解石内の総微量金属元素濃度に規定されていると考えられる. 本研究により,ラマン分光分析データが生物源方解石殻の殻成長速度や総微量金属元素量の指標となることが示唆された.この知見は,ラマンデータが続生作用の判定に限らず,殻形成メカニズムの違いの評価に有用である可能性を示している.しかし,依然として生物源方解石のラマンデータは不十分であり,今後も基礎データの蓄積が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラマンスペクトルパラメータが結晶状態を明瞭に反映するにも関わらず,生物源方解石においてラマン分光分析を適用した先行研究は少ない.今年度は,低Mg方解石からなる腕足動物4種において,数μm間隔でラマンスペクトルを取得し,殻垂直断面でのラマンデータを得た.これは今後,生物源方解石でラマン分光分析を行うにあたっての基礎データとなる.さらに,EPMAを使用した殻垂直断面のMg,Sr分布データを追加したことで,当研究室がこれまで蓄積した,腕足動物殻の化学組成に関する知見とラマンデータを結び付けることに成功した.これにより,生物源方解石のラマンデータが示す意味を見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,天然の炭酸塩化石試料や,人工的に続成変質させた炭酸塩試料等に対し,ラマン分光分析および電子線マイクロアナライザー分析を実施し,これらを組み合わせた非破壊分析による続生判定がどの程度有用であるかを検討する.並行して,現生試料の分析による基礎データの蓄積も進め,個体差,殻内差,生息環境の違いがラマンデータにどの程度現れるか検討していく.
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Causes of Carryover |
研究遂行上,ラマン分光分析およびEPMAによる微量金属元素分析を行った同一試料の同位体分析が必要となった.そこで,高時間分解能での分析試料のサンプリングとその同位体分析の経験が豊富である高柳栄子を研究分担者とし、ラマン分光分析およびEPMA分析を行なった部位での同位体分析を追加で実施することとしたため。
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