2023 Fiscal Year Annual Research Report
氷惑星内部でのアミノ酸重合と不斉増幅の可能性を探る
Project/Area Number |
21K18643
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍵 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80262848)
奈良 雅之 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (90301168)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | アミノ酸 / 高圧 / 重合 / 不斉濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命体がL体のアミノ酸のみから構成されるというホモキラリティが、氷惑星・衛星内部の高圧環境でアミノ酸が重合する過程でもたらされた不斉増幅に起因するのではないかと言う作業仮説を立てて、研究を進めた。本研究の目的はこの仮説を高圧実験と回収試料の精密な分析実験によって、明らかにすることにある。 L-アラニン(L体)の粉末を純水を圧力媒体として対向型アンビルを用いて室温下で約10 GPaに加圧した。また、光学異性体(D体)が混在する試料についても同様に高圧実験を行った。回収された試料には4種類の2量体(LL, LD, DL, DD)と、8種類の3量体(LLL, DLL, LDL, DDL, LLD, DLD, LDL, DDD)が生成しうる。 重合過程での不斉増幅を検出するためにはこれらの異性体をそれぞれ分析する必要がある。 実際にLC-MSでこれらの試料を分析すると、多くのペプチドのピークが重なり、それぞれの異性体を分析することは不可能であった。そこでアラニン分子中の水素を重水素で同位体ラベルしたL-アラニンを用いることにより、LC-MSでこれらの異性体を完全に分離可能であることを明らかにした。高圧実験の回収試料で得られるペプチドのピーク同定と定量分析のための標準試料として、それぞれのペプチド異性体を固相法によって合成した。 本研究で開発した方法によって、高圧下で得られたオリゴマーからは確率論的に得られるであろう異性体の比率を超えて、有意に過剰に生成する分子種があることがわかった。今後も引き続き詳細な分析を行い、高圧下での重合過程における不斉増幅の可能性を明らかにしていきたい。
|