2022 Fiscal Year Research-status Report
2台の超伝導重力計を用いた重力水平勾配観測による地震即時重力変化の検出
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21K18644
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 竜一 東京大学, 地震研究所, 助教 (10835101)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導重力計 / 地震即時重力変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,おもに,前年度末に長野県松代へ移設した超伝導重力計CT #036の維持と調整を行なった.前年度に重力センサーの磁場の調整を行なった際,テクニカルな問題のため勾配を十分に弱めることができず,開回路での感度が低い状態での運転を続けてきた.しかし,記録されたデータを見る限り,長期的安定性やノイズレベルなどの点において,実際上の問題はほとんどないことが確認された.磁場の調整をやり直すことは,センサーに熱を注入する関係で液体ヘリウムを相当量消費することになるが,昨今のヘリウム供給が非常にタイトである状況を考えると,液体ヘリウムの消費を極力抑えることが観測を維持するためには必須である.こうしたことから,磁場の再調整はあえて行わず,現状のままで運転を継続することとした.一方,CT #036と比較すべき超伝導重力計iGrav #028については,おおむね正常に稼働しているものの,冷凍機内部に水が混入したことによる不安定な挙動が発生し,データの品質が著しく悪化して使用に耐えない時期があった.冷凍機を交換したことにより,現在では安定した動作を取り戻している.2台の重力計の並行観測データの詳細な比較に関しては,当初はCT型のコントローラーのフィードバック回路を改造して周波数特性を一致させることを計画していたが,製造から20年以上が経過した古い装置であるためか,周辺温度の影響などに関してやや理屈に合わない挙動が観察された.このため,アースまわりを強化するにとどめ,回路の大幅な改造は見送ることとした.そのかわり,デジタルデータ処理によって,2台の周波数特性の違いを吸収することを試みた.角周波数の関数としての伝達関数が複雑になるため,係数を安定して決めることが難しいことがわかった.未定係数の決定には,MCMC法などの適用が必要かもしれない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記したように,2台の超伝導重力計それぞれにテクニカルな問題が発生し,その解決や調整に時間を要した.具体的な地震イベントの解析に入る前に,装置の応答特性やデータ収録システムの時刻精度を検定するための分析も必要であり,2022年度はそれらがようやく完了しつつあるという状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
CT型超伝導重力計は,松代への設置から1年が経過し,動作上の問題点がほぼ一通り出尽くしたように思われる.その中で,周囲温度の影響が予想外に大きいことがわかってきた.当初,観測室内の温度環境を整えるため,フレクシブルホースを延長して圧縮機を坑道入口付近へ移動することも計画していたが,これには冷凍機の安定動作が損なわれる可能性をかえって高めるというリスクがある.液体ヘリウムを自由に調達できないというきびしい制約のなかで,むしろ室温を高く保つことが最適解であるという方針に切り替えようとしている.これは精密重力観測点としては新しい試みだが,完全に安定した観測状態を早急に実現できるよう,十分に調整していきたい.
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Causes of Carryover |
CT型超伝導重力計の高速データ収録に用いる8.5けたマルチメーターを導入する予定であったが,機器の調整と観測環境の整備が終わっていないため,導入を次年度に持ち越した.液体ヘリウムの充填作業を2回行う予定であったが,入手困難のため1回しか実施できなかった.2023年には計画的に調達して,適切なタイミングで2回行いたい.
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Research Products
(7 results)