2021 Fiscal Year Research-status Report
デジタル画像相関法を用いた衝突破片速度分布の解析と氷接触連星の形成過程への応用
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21K18654
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保井 みなみ 神戸大学, 理学研究科, 講師 (30583843)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 衝突実験 / デジタル画像相関法 / 層構造標的 / MATLAB / 変位 / 破片速度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
海王星以遠の太陽系外縁領域を起源とする彗星核やカイパーベルト天体は,2つの大きな多孔質小氷天体が合体した接触連星が多い.この領域で接触連星が高頻度で形成される理由を探るためには,母天体である氷微惑星の衝突破壊過程,特に衝突破壊後の破片速度分布を調べる必要がある.破片速度分布は衝突実験により調べられるが,主流の高速カメラを用いた手法では,標的表面からの放出破片しか解析できない.そこで,デジタル画像相関法(DIC法)と衝突実験と組み合わせた新たな破片速度分布解析手法を開発する. 今年度は室温下で使用可能な標的試料を用いて実験を行った.標的には表層(マントル)を石英砂・石膏混合物,中心(コア)を粘土とし,直径60mmの半球標的を用意した.コアの直径は30mmである.比較のため,マントル物質のみの均質標的も用意した.半球の平面には,DIC法による変位計算のため,スプレーでランダムな点をつけた.実験は神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いた.弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球とし,衝突速度は2.6,4km/sである.DIC法を用いるため,破壊の様子を標的正面から高速カメラで撮影した.撮影速度は毎秒10万コマとした.DIC法の解析にはMATLABオープンソフトウェアのncorrを用いた. DIC法を用いて,衝突後1msまでの標的破片の変位を,弾丸進行方向とその直角方向の二成分に分けて解析した.均質標的は衝突点から放射状に応力が伝播した.一方,層構造標的はコアがマントルよりも変位量が大きくなった.また,標的表面のあるパターン1点のみに注目し,その変位量から速度を計算した結果,ある時間(0.1ms以内)で速度が一定になることがわかった.その境界となる時間は,マントルよりもコアの方が2倍以上遅くなることがわかった.マントルの境界時間は,均質標的の場合とほぼ同じであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,これまで行ったことのないDIC法を用いた破片速度分布の解析手法の確立に重点をおいて,研究を行った.DIC法はソフトウェアMATLABに標準装備されているオープンソフトウェアncorrを用いて行った.このソフトウェアを用いて,標的平面に塗布されたランダムパターンを追跡し,破壊後の破片の変位の時間変化をマッピングすることを可能とした.そして,弾丸の進行方向とその垂直方向に変位の成分を分けることで,視覚的に変位を見やすくすることができた.また,ある1点のランダムパターンに注目し,その変位の時間変化から移動速度を計算することも可能となった.破片速度分布を求めるためには衝突点からの距離と移動速度の関係を計算する必要があり,その計算結果を得るまでには至っていない.しかし,1パターンの移動速度解析が可能となったため,今後,時間をかけること無く距離と移動速度の関係を調べる事は可能であると考えている.また,最終的には破片質量分布と破片速度分布の関係を調べる必要があり,そのためには破片質量分布を調べるための衝突破壊実験が必要である.氷の衝突破壊実験は,本研究室で長年行っている主要な研究であるため,次年度に開始しても十分時間的に余裕があると判断した. 以上より,今年度の目標であるDIC法を用いた破片速度解析手法の確立はほぼ達成したため,「おおむね順調である」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度ほぼ確立したDIC法を,氷・雪の層構造標的に応用することを目標とする.そのため,氷・雪層構造標的を用いた衝突破壊実験を,本格的に開始する.今年度使用した横型二段式軽ガス銃の標的設置チャンバーは,-20℃まで冷却可能な低温室内に設置されている.そのため,標的の作成方法を確立すれば,実験はすぐに開始できる.本研究室では,氷や雪標的を用いた衝突実験を長年に渡って行っており,単体での球形試料(雪試料,氷試料)の作成方法は概ね確立されている.そこで,氷をコア,雪をマントルとした層構造標的の作成方法を確立することを,次年度最初の目標とする.氷球と雪の作成方法は既に確立しているため,マントル層の厚みを正確にコントロールした層構造標的を作る方法を確立する.マントル層の厚みとコア半径の比は0から4まで変化させる予定である. この層構造標的の作成方法を確立した後,神戸大学の横型二段式軽ガス銃を用いた衝突実験を開始する.弾丸には直径4.7mmのポリカーボネート球を用いて,衝突速度は1,2.5,4km/sとする.DIC法を用いた解析手法は,今年度と同じである.球形試料を半分に切断し,平坦な面にランダムパターンを塗布する.その面を高速カメラで撮影し,ランダムパターンの変化を観察する.
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Causes of Carryover |
(理由)今年度は氷を用いた実験を行わず,既に開始していた石英砂石膏・粘土層構造試料を用いた実験を行ったため、チェストフリーザーは購入しなかった.同様に、試料作成用の冶具および衝突実験消耗品は既存の物を使用したため、それらの購入費は来年度に持ち越すことにした。また,MATLABのライセンス料は,既に研究室で購入したライセンスを使用可能であったため,来年度以降の更新時に使用することにした.さらに,神戸大学の規定により年度途中のRA採用が難しかったため,RA雇用費は次年度から使用開始となっている. (使用計画)次年度から氷を用いた実験を本格的に開始するため,氷試料作製用の冶具用鋼材を購入する.また,DIC法解析用のコンピュータを購入する.また,実験用の光源として一体型高輝度LED照明装置を購入する予定である. 実験は研究代表者の他にRAを1名雇用し,修士院生も含めて3名で実験を行うため,RA雇用費を確保する.また,次年度からは対面による学会が再開することが予想されるため,9月末に茨城県水戸市で行われる日本惑星科学会で,今年度行ったDIC法による破片速度分布の解析結果の報告と,雪・氷層構造標的を用いた衝突破壊実験の途中経過を報告する予定である.そのため,研究代表者,RA,及び修士院生の3名分の旅費に使用する予定である.
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Research Products
(14 results)