2022 Fiscal Year Research-status Report
過渡的透明化によるセラミクスの超高速精密フェムト秒レーザ加工
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21K18667
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 佑介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90843227)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ジルコニア / TSL / 過渡選択的レーザ加工法 / 電子励起 / フィラメント |
Outline of Annual Research Achievements |
セラミック材料は,優れた機械的,電気的,熱的特性を有することから,電子機器,光学機器等の主要部品として活用されている.これらの機器の更なる高機能化,低価格化のためには,セラミック材料の微細加工を高能率かつ精密に施す技術の確立が要求されるが,その硬脆性故にセラミック材料の加工は困難を極める.硬脆材料に対する微細加工技術としてフェムト秒レーザが注目されているが,精密加工と加工能率に課題が存在する.上記の2点の課題を同時に解決する手法として,2018年に「過渡選択的レーザ加工法」が実証された.しかしながら本技術の適用対象は,その原理上,透明材料に限定され,不透明であるセラミック材料には適用できない.そこで本研究では,不透明材料を加工中に瞬間的に透明化する技術を開発することで「過渡選択的レーザ加工法」の適用範囲を拡張し,セラミック材料の超高速精密微細加工を実現することを目的とする. 本年度は,セラミック材料内部の粒界における光散乱に着目し,プローブ光を内部に集光した際の散乱光を捉えることで,フェムト秒レーザ照射下の現象を,ピコ秒~ミリ秒に至る超高速かつ極めて広い時間領域で写し出した.その結果,材料内部において,電子の励起された領域を観察可能であることを示した.また,この励起領域に対して光を照射し,ジルコニアセラミクスへの過渡選択的レーザ加工法の予備的実験を実施することで,加工が可能であることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セラミック材料の超高速精密微細加工の実現を見据え,前年度はレーザ加工現象の高速観察システムを構築し,加工の基礎過程を調査した.さらに本年度は,プローブ光を材料内部に集光した際の散乱光を捉えることで,フェムト秒レーザ照射下の現象の,ピコ秒~ミリ秒に至る超高速かつ極めて広い時間領域での撮影を実現した.この撮影結果から,不透明にみえるジルコニアセラミクスの内部においても,電子励起領域が過渡的に出現することが明らかになった.また,光の照射条件に応じて,励起領域の形状が大きく変化することが示された.さらに,生成された電子励起領域に対して連続波レーザを吸収させることにより,ジルコニアセラミクスに対して過渡選択的レーザ加工法が実現することを示した.対照実験として,事前に励起を起こさずに,連続波レーザのみを照射したところ,加工は起こらなかった.このことから,励起させることが加工成立に不可欠であることが示され,過渡選択的レーザ加工法がジルコニア加工において有用であることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,セラミクス内部をピコ秒スケールの超高速で観察することによって,励起領域が過渡的に出現することを示した.今後,さらに詳細に条件を振って評価を進めることが,加工法を確立する上で必要となる.また,加工のメカニズムを解明する上で,光照射下の過渡的な吸収特性を評価し,励起された電子密度および,欠陥準位の有無や,その準位のエネルギを推定することが重要である.ポンプ・プローブ法の影絵の撮影から得られる吸収係数とドルーデモデルを用いることと,マッハ・ツェンダー干渉計を用いて干渉縞の歪みから屈折率変化を抽出することによって電子密度を推定する.また,OPAのシステムを構築し,波長可変のプローブ光を生成することによって,欠陥準位の精密計測を目指す.以上の基礎的な検討に基づき,セラミクスへの過渡選択的レーザ加工法の実現メカニズムを明らかにした上で,詳細な条件出しをすることによって,加工法を確立させる.
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Causes of Carryover |
加工現象をさらに精密に調査するために,200万円超の高感度カメラを購入する.本製品の納品が2022年度内に間に合わなかったため,2023年度に予算をまわして,活用する.また,試料の購入にも予算を活用する予定である.
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Research Products
(11 results)