2021 Fiscal Year Research-status Report
A new concept of the low friction mechanism of layered materials
Project/Area Number |
21K18679
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | グラフェン / 酸化グラフェン / 層状化合物 / トライボロジー / 分子動力学 / 反応力場 / マテリアルズ・インフォマティクス / 水 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:全原子分子動力学を反応力場系に拡張し,水分子集団を含む移着片の摩擦発現過程を解析する手法を作成した.シミュレータとして並列化効率に優れた LAMMPS を用いているが,初期状態の作成方法,熱回避移運動の解析方法などについて研究が進展した. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:グラフェン移着片周辺の水素結合について解析を進めている.グラフェン末端が,水素終端であっても親水的であることがわかったため,その解析を進めた. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:鉄基板におけるグラフェン,鉄微粒子を内包したグラフェンについて解析手法を拡張した. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:実験との連携としては,酸化グラフェンの低摩擦機構について,兵庫県大木之下教授らの解析している酸化グラフェンの摩擦挙動について新たに解析をはじめた.反応力場を用いたグラフェンモデルを作成し,酸化量と層状構造の違いについて,実験の傾向を再現することができた. (5) MIによる最適組成の探求:高分子溶融体において開発したパーシステント・ホモロジーによる解析手法を,多成分系として電池の電極界面のイオン,潤滑系としてトラクション・フルードに適用して,適用対象を広げている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:グラフェンの低摩擦における雰囲気中の水の寄与については,これまで全く議論されてこなかった.詳細解析により世界的に問題提起をしつつあり,摩擦の科学における根本的な課題を展開していると考える. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:材料近傍における水の寄与については,新学術領域「水圏機能材料」で提案されているように,材料科学の新しい着眼点であり,この観点からも本研究課題は寄与できると考えられる. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:エンジニアリングの観点としては,グラフェンを常に不整合状態で接触させることが低摩擦発現に重要であると考えられ,鉄との混合系について議論することができた意義は大きい. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:上記と関連するが,酸化グラフェンについても幅広い適用対象が存在する.一方で,層状化合物として通常のグラファイトと同じ熱回避運動による低摩擦機構であるかどうかが判らなかった.この点について,両者が異なるということが判りつつあり,層状化合物の科学として有意義であると考えられる. (5) MIによる最適組成の探求:本系は雰囲気分子を含む潤滑系であるため,MIの適用は困難であるが,有力な解析手法としているパーシステント・ホモロジーを本系に適用する準備が出来つつある.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 雰囲気分子を含む移着片の摩擦発現について検討するためのユニバーサルな方法論を確立:研究開始時に,酸化グラフェンにおいて大きな進展があったため,これを含めたユニバーサルな手法開発としたい. (2) 疎水性相互作用等の雰囲気効果の詳細を検討するための機構解析手法の構築:水環境下におけるグラフェン移着片の挙動について論文化を現在進めており,必要に応じて解析を増やす予定である. (3) 共有結合性結晶,イオン結晶一般のための解析手法の拡張:こちらについても,酸化グラフェンを中心に解析を進展させたい. (4) 連携研究グループから提供された実験系に対応する大規模実証計算:酸化グラフェンの実験との連携をさらに深める.また大規模実証計算を準備する. (5) MIによる最適組成の探求:本系におけるMIの実現を目指して,手法開発を進める.
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Causes of Carryover |
本年度は,海外出張を計画していたがコロナ禍により不可能であった.同様に,学生を引率しての国内学会出張も企画していたが不可能であった.論文の投稿代についても,今年度は掲載されなかったので使用できなかった.2022年度は,学会出張や論文掲載に尽力したい.
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