2021 Fiscal Year Research-status Report
分子動力学に基礎づけられた「ゆらぎの流体力学」の創成
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21K18692
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
矢野 猛 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60200557)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ゆらぎ / 流体力学 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱流体力学の前提条件である局所平衡の仮定が成立しない程度の小さなスケールにおいては「ゆらぎ」が相対的に顕著となる。しかし、ある時刻にある位置に現れた変動成分が、何処でどのように振る舞うかを分子レベルから議論するための理論的枠組み、すなわち、分子動力学に基礎づけられた「ゆらぎの流体力学」は取り組まれた例がない。分子動力学計算によって全分子の運動を詳細に明らかにすることをとおして、「ゆらぎの流体力学」の創成を目指すことが本研究の目的である。これによって、さまざまな巨視的な流れの不安定を誘起する擾乱の起源、気泡核の巨視的な意味での初生などに対して、確率的・統計的にではなく、分子運動に基づく決定論的な解析が可能になると期待できる。さらに、本研究の成果によって、界面の非平衡現象に関わる熱流体現象(表面張力、濡れ、速度すべり、蒸発・凝縮など) に取り組む分子動力学研究の進展に関して、一層の理解と応用の促進が期待できる。具体的には、単一種単原子分子および複数種単原子分子の気液2相、熱伝導、せん断流れ、音波などの平衡状態と非平衡状態に対して、数百万分子の系の分子動力学計算を行う。この計算において、計算領域内に任意の有限な検査体積を設定して, この検査体積内の分子集団に関する質量と運動量とエネルギーの保存方程式を新たに導出する. この保存方程式はNewton の運動方程式から厳密に導出されて、任意の検査体積と任意の検査時間に対して成立することが本質的に重要である。これまでにも、KirkwoodらのグループはLiouville方程式から流体力学型の保存方程式を導いているが、応力や熱流などの諸量は、分子数→∞、標本数→∞の平均、あるいは検査時間→∞の時間平均などを用いて定義されており、個々のゆらぎの時空間発展の議論の材料となりえない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの世界的蔓延のために、国際会議等の開催が中止になり、諸外国の当該分野研究者達との直接的な研究討論および情報交換が妨げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
界面の非平衡現象に関わる熱流体現象(表面張力、濡れ、速度すべり、蒸発・凝縮など) に取り組む分子動力学研究の進展に関して、一層の理解と応用の促進を目指して、単一種単原子分子および複数種単原子分子の気液2相、熱伝導、せん断流れ、音波などの平衡状態と非平衡状態に注力しつつ、数百万分子の系の分子動力学計算を行ってゆく。その際、新規かつ独自の数値処理アルゴリズムを導入することによって、効率的な研究推進を実現する。
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Causes of Carryover |
コロナの世界的蔓延のために、国際会議等の開催が中止になり、支出不要となった出張旅費相当分を次年度に使用することとした。具体的には、令和4年度に新たに製造販売が開始されるZen4型processorの購入に充当し、分子動力学計算における新規かつ独自の数値処理アルゴリズムの構築のための研究の一層の効率化を目指す。
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