2021 Fiscal Year Research-status Report
サブnW級分解能をもつ単一細胞熱分析プラットフォームの構築
Project/Area Number |
21K18694
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢吹 智英 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70734143)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | バイオカロリメトリ / 単一細胞分析 / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高感度熱量計と真空恒温槽からなる,nW,サブnW級の熱量計測分解能をもつバイオ熱分析プラットフォームの開発を目的に研究を行っている.ガラス細管を加熱延伸して薄肉のマイクロチャネルを形成し,その側面にスパッタリングで薄膜サーミスタを加工する新しい方法でナノカロリメータを作製し,性能評価を行った.開発したカロリメータは,チャネル内が閉構造になっているため,細胞のようなウェットなサンプルをチャネル内部に挿入して熱分析を行うことができる特徴を持つ.作製した自立マイクロチャネルは,一例を示すと,外径40ミクロン,壁の肉厚約2ミクロンで,チャネル壁内の熱伝導の熱抵抗を高めた結果,大気中で10^5K/W,さらに真空中に配置して周囲空気への熱損失を低減することで10^6K/Wという極めて高い熱抵抗を得ることができた.言い換えると,0.1~1mK程度の温度変化を検出できれば,0.1~1nW程度の細胞の発熱量を検出できることになる.微小な温度変動を計測するためには,温度安定性の高い恒温槽の開発が必要になる.今年度は内部を真空に引いて断熱性を高めて外界の温度変動の影響を軽減できる真空恒温槽を製作した.恒温槽のデジタルPID温度制御により1mK程度の温度安定性が実現できた.また,温度センサを自己発熱させて温度走査しながらインジウム微粒子の融解・凝固に伴う吸発熱を観察する示差熱分析(DTA)も行った.結果としてサブμJの相転移熱量を検出可能なことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とするレベルの極めて高い熱抵抗(熱量計測感度)をもつナノカロリメータを作製でき,微小熱量を検出するDTAにも成功したため,生体試料の熱分析に目途が立った.恒温槽の性能向上が単一細胞の発熱量計測のためには重要な課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
デジタル温度制御器の制御分解能による制限を受けて1mK程度の温度安定性しか実現できなかったため,アナログ制御を加えて一桁以上温度安定性を向上させる.その後,単一細胞の中では,比較的大きな発熱量を持つと予想される単細胞生物であるミドリムシやゾウリムシの発熱量計測を試みる.また,極微量タンパク質溶液の熱分析を通じて細胞内タンパク質の相転移熱量検出の可能性を検証する.
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Causes of Carryover |
研究に使用する露光装置の修理の必要性が生じたが,昨今の半導体不足により,納期の大幅な遅れが生じたため繰越金が生じた.繰越金により修理を行う.
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Research Products
(2 results)