2022 Fiscal Year Annual Research Report
サブnW級分解能をもつ単一細胞熱分析プラットフォームの構築
Project/Area Number |
21K18694
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢吹 智英 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70734143)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | バイオカロリメトリ / 単一細胞 / 代謝熱計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ナノW級の熱量計測分解能を持つ熱分析プラットフォームを開発して,単一細胞の発熱量を計測することを目的として研究を行ってきた.昨年度開発した,自立マイクロチャネル型ナノカロリメータを用いて,単細胞生物の中で比較的大きな発熱量が期待できるゾウリムシの代謝熱量計測を行った.本カロリメータは,高コストなMEMS加工技術を用いずに加熱延伸と側面への薄膜サーミスタの成膜の二つからなる簡便なプロセスで製作できて,なおかつ極めて高い熱抵抗(計測感度)を有する,優れた特徴をもつ.微小な発熱量を微小な温度上昇として検出するのに周囲環境の温度安定性が不可欠であり,まず,真空チャンバと内部の多重構造からなる恒温槽を製作した.温度安定性をさらに高めるために真空恒温槽をインキュベータの内部に設置して温度安定性を評価したところ,0.017mK/minの小さな温度ドリフトしか生じない優れた温度安定性が得られていることが確認できた.代謝熱量計測には,真空下で0.18K/μWの大きな熱抵抗をもつカロリメータを使用した.二匹のゾウリムシを含む懸濁液を計測部に挿入した際に,約6mKの温度上昇が観察され,熱抵抗を用いて換算した発熱量はゾウリムシ一匹あたり17nWであった.今後,ゾウリムシの数と計測した代謝熱量の関係を観察することで,真に単細胞生物の代謝熱量を捉えられているのかを確認する.また,熱量計測分解能を劣化させていることがわかっている計測系の電気ノイズを軽減して,さらに小さな発熱量の検出を目指す.
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