2022 Fiscal Year Research-status Report
プロペラに替わるチルトスラスト推進機構を搭載した安全ドローンの研究
Project/Area Number |
21K18695
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
延原 肇 筑波大学, システム情報系, 教授 (80359687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 新 筑波大学, システム情報系, 助教 (40803549)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ドローン / コアンダ効果 / 自己組織化マップ / サロゲートモデル / 人工知能 / 流体シミュレーション / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドローン利活用をポジティブに推進するための対策として、機体構造および制御設計を抜本から改善した安全ドローンを提案することである。すなわち、ドローン事故のリスク要因の大半を占める回転推進機構(プロペラ)を使わずに、コアンダ効果を用いた推進機構に基づく新たなドローンを提案する。 本研究では、これまで、提案推進機構を、ソフトウェアの流体シミュレーションによる予測と、3Dプリンタによる実機作成および実際の推力計測結果をデータ同化させ、自己組織化マップによる最適な推進機構の絞り込みを行ってきた。提案する推進機構では、リング形状を基本とし、直径、高さ、吹き出し口の形状など、それぞれを変化に伴い推力および推進機構自体の重量が変化する。推進機構の最適化とは、推力を最大化し、さらに推進機構自体の重量を最小化することであるが、調整可能なパラメータ群による組合せ爆発が原因で、最適候補の探索が困難となる。具体的には、3Dプリンタによる推進機構の実装には1個体あたり数日、流体シミュレーションも1個体あたり1時間程度必要となる。2021年度は、この問題を解決するため、実際に試行できる組み合わせだけを使って、設計候補の探索空間全体をマクロに視覚化し、最適な候補を絞り込むことのできる、自己組織化マップに基づく設計手法を用いて、重量推力比(スラスト機構自身の重量と、推力の比率、これが1.0以上で浮上)が約10程度を実現した。 これに対し、2022年度は、最適化に大きな影響を与えないパラメータを取り除き、逆に、物理特性を考慮し新たなパラメータ追加を行い最適化を試みた。また自己組織化マップの探索空間の粒度についても検討を行い、具体的には、50から100個体のシミュレーション結果だけではなく、サロゲートモデルによる学習・予測結果を使うことで探索空間の粒度を細かくできることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している。具体的には、当初予想よりも十分な重量推力比が得られており、さらに、サロゲートモデルという新たな枠組みを取り入れることで、最適化の精度の向上が期待できるようになっている。また、最適化に大きな影響を与えないパラメータを取り除き、逆に、物理特性を考慮し新たなパラメータ追加を行い最適化も行っており、さらに性能の良い推進機構の設計が実現できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、提案推進機構を、ソフトウェアの流体シミュレーションによる予測と、3Dプリンタによる実機作成および実際の推力計測結果をデータ同化させ、最適設計を探索するアプローチを行ってきたが、それぞれの計算・実装コスト、具体的には、3Dプリンタによる推進機構の実装には1個体あたり数日、流体シミュレーションも1個体あたり1時間程度必要となる点がネックであった。これに対して、2022年度、サロゲートモデルによる学習・予測結果を使うことで探索空間の粒度を細かくできるという、新たな研究の糸口が明らかとなった。この方向で研究を進めることで、さらなる性能向上が期待できるため、本研究の研究期間を1年間延長し、2023年度、サロゲートモデルに基づく推進機構の最適化精度の向上、およびそれに基づく実機体の作成を進めてゆく方針である。
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Causes of Carryover |
2022年度の研究遂行中において、提案推進機構の最適化にサロゲートモデルの適用が有効であることが判明し、またそれに基づく精度向上が大きく期待できることが明らかになったため、この方針を進めるための十分な研究期間の確保(研究期間の延長)およびそのための予算確保を行ったため。
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