2021 Fiscal Year Research-status Report
超高屈折率・無反射な積層材料によるテラヘルツ光渦の発生
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21K18712
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 健仁 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60550506)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / アンテナ / メタサーフェス / メタマテリアル / 極限屈折率材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代高速無線通信やイメージング技術に向けて、光源から放射されたテラヘルツ波の制御が必要不可欠である。らせん状の波面を有する光渦は、トポロジカルチャージ数の異なる光渦を多重化できるため大容量無線通信システムへの応用が期待されている。研究代表者の研究グループでは、これまでに独自の1方向の偏光で高屈折率かつ無反射な動作をするメタサーフェスを積層した光渦生成素子の可能性を見出しつつある。そこで、1年目は、光渦を検出するための精密な実験系の構築に必要となる電波吸収体について検討を進めた。光渦生成素子などの実験評価のためには、ノイズの影響を低減する電波吸収体が必要である。テラヘルツ波帯ではこれまでに、メタサーフェスからなる電波吸収体が膨大に報告されている。しかしながら、メタサーフェスを用いた電波吸収体は、テラヘルツ波帯では波長以下の大きさである数um~数100umスケールの微細構造を周期的に作製する必要があり、数10cm~数mのスケールの実験系に使用するためには、大面積の作製が必要となるため高価となる。また、メタサーフェスを用いた電波吸収体は実用化も途上の段階である。そこで、テラヘルツ波帯の電波吸収体よりも安価で実用化が進んでいるミリ波帯電波吸収体をテラヘルツ波帯の実験系で利用できないか詳細に検討した。テラヘルツ時間領域分光法により、ミリ波帯電波吸収体の透過と反射を測定した。その結果、ミリ波帯電波吸収体がテラヘルツ波帯でも吸収特性を有しており、テラヘルツ波帯の実験系でも使用できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミリ波帯電波吸収体として、波状型、ピラミッド型、シート型の構造の電波吸収体計14種類のテラヘルツ波帯での透過と反射の特性を測定した。実験系を囲う電波暗室の壁に電波吸収体を貼り付けて使用する場合と実験系の装置に電波吸収体を貼り付けて使用する場合の2つの用途を意図している。実験にはテラヘルツ時間領域分光法(Toptica Photonics社製TeraFlash)を用いた。 まずは透過測定として、集光系と平行光系の2種類の光学系による測定を行った。異なる光学系で電波吸収体を測定し、透過特性を評価した。リファレンスには乾燥空気を用いた。集光系による実験で、0.2~1.0THzで透過が-50から-60dBとなる電波吸収体を見出した。同様に、平行光系による実験でも、0.2~1.0THzで透過が-50から-60dBとなる電波吸収体を見出した。ピラミッド型の電波吸収体で、測定ごとに透過が変化し、安定しないことが見受けられた。透過が変化した理由として、電波吸収体の構造がピラミッド型のため、測定位置により測定光が通過する電波吸収体の厚みが変化し、吸収特性に影響した可能性が考えられる。 次に反射測定として、集光系の光学系による測定を行った。入射光に対して電波吸収体が垂直な場合と斜めの場合の2種類の測定を行った。金属製の電波暗室の壁や実験装置に電波吸収体を貼った場合を想定して、電波吸収体の裏側に銀ミラーを設置した。反射測定のリファレンスには銀ミラーを用いた。0.2~1.0THzで反射が-40から-50dBとなる電波吸収体を見出した。透過の実験結果と異なり、電波吸収体の種類によって反射の大きさの変化が見られなかった。原因として、反射測定では信号の強度不足、反射測定の電波吸収体内の経路が透過測定の2倍であることなどが考えられるが、電波吸収体でテラヘルツ波を十分に吸収できていることを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
現状で、光渦生成素子の性能を精密に測定する実験系の構築に向け、テラヘルツ波帯でのミリ波帯電波吸収体の特性をテラヘルツ時間領域分光法により評価した。その結果、測定したミリ波帯電波吸収体で、テラヘルツ波帯の実験系でも使用できる可能性を見出した。今後、引き続き1方向の偏光で高屈折率かつ無反射な動作をするメタサーフェスを積層した光渦生成素子の最適化設計を進めるとともに、今回測定した電波吸収体を用いて光渦生成素子の実験評価を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 超微細インクジェット装置の拡張を検討していたが、超微細インクジェット装置による素子作製レシピの構築が進んだこともあり、0.3THz帯の光渦検出のために実験系の構築費用を支出したいため。 (使用計画) 0.3THz帯の光渦検出のための実験系の構築費用
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Research Products
(7 results)