2021 Fiscal Year Research-status Report
Optically isotropic liquid crystal based on designed defect-distribution and polarization-independent electrooptic device
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21K18722
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 雅則 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50204186)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 液晶 / 光デバイス / 配光欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶の特徴は分子の自己組織的な配列に基づく様々な性質の異方性であり、なかでも誘電的、光学的異方性を利用したものが液晶光制御デバイスである。しかしながら、これらのデバイスの特性は入射光の偏光状態に強く依存し、応用が制限される場合が多い。一方、異方性を生み出す分子配列は、強いキラリティの導入やデバイスの基板界面・外部電界印加の影響により、配向場の不整合(トポロジカル欠陥)を内包する場合が多い。本研究では、従来の液晶デバイスでは有害なもの不要なものと考えられてきた欠陥の配列を空間的に制御することにより、光学的に等方な液晶を実現し、新しい発想の新規光デバイスを開発することを目的として研究を進めた。本年度は、元々トポロジカル欠陥との共存により三次元配向秩序を有するブルー相液晶の空間欠陥を人為的に制御する方法を採用し、ブルー相液晶の格子配列の精密制御を目指して、素子基板表面への配向容易軸の付与と電界印加によって格子面ならびに格子軸のマクロな制御を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、本来自己組織的に秩序形成を行う液晶に対して、人為的な秩序を付加することにより、光学的に新たな分子配向状態を実現しようとするものである。具体的には、我々がこれまで提案してきた局所パターン配向技術を活用する方法と、元々トポロジカル欠陥との共存により三次元配向秩序を有するブルー相液晶などに空間欠陥を人為的に導入する方法の二つのアプローチを計画していた。本年度は、後者のブルー相液晶の格子配列の精密制御を目指して、素子基板表面への配向容易軸の付与と電界印加によって格子面ならびに格子軸のマクロな制御を試みた。 ブルー相液晶は、体心立方晶系をなすブルー相I(BP I)と単純立方晶系をなすブルー相II(BP II)のサブフェーズが存在するが、今年度は、BP Iの配列特性を調べた。BP Iの基板界面に垂直方向に十分な電界を印加すると螺旋構造は消失して、液晶分子が一様に基板に垂直に配列する状態となる。その状態から徐々に電界を減少させていくと、一次元螺旋構造が形成されるフォーカルコニック状態が発現する、さらに電界を下げると格子の歪んだブルー相であるブルー相X(BP X)が発現し、最終的にはBP Iに戻る。このように、電界除去時にフォーカルコニック状態およびBP X状態を経由することにより、BP Iの(110)面が基板に平行に配列し、[001]軸方向が基板面上の配向容易軸に沿った格子配列が実現できることが明らかとなった。ここで、それそれの状態の格子配列への寄与の詳細を調べたところ、BP X状態を経ることにより格子面の方向が決定され、また、フォーカルコニック状態を経ることにより格子軸が配向容易軸に揃うことが明らかとなった。以上の知見を元に、格子の配列すなわちそれに伴うトポロジカル欠陥の配列をマクロな三次元空間で制御することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究をさらに進めることに加えて、電界印加の方向などの検討を行うことにより格子配列機構の詳細が明らかになるものと考えている。また、BP Iの他にもトポロジカル結果が三次元的に連結したBP IIの格子配列制御も検討する。加えて、光干渉系を構築し、三次元局所光重合あるいは光異性化反応の実現を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度の研究計画は概ね予定通り進展したが、当初実施を予定していた分子配向条件の最適化が当初予想していた以上に順調に実現され、計画していた実験の試行回数が大幅に減少した。したがって、条件最適化に必要な材料等の購入を行わなかったため残額が生じた。また、関連して、上記実験の補助にかかる人件費も使用しなかったが、令和4年度にさらなる最適化を実施するため執行予定としている。加えて、予定していた実験、成果報告および情報収集が、新型コロナウィルス対策ための行動自粛により実施できなかった。その分の経費に残額が生じたが、令和4年度に繰り越して実験、情報収集等を行うため執行予定である。 (使用計画) 当該実験は令和4年度に入ってから実施し、より配向性の高い秩序構造の実現を目指し、本研究の目標の達成を目指す。従って、令和4年度において配向剤等の必要部材を購入する予定であり、補助に係る人件費も必要となる予定である。また、新型コロナウィルス対策の行動自粛緩和の状況に合わせて、情報 収集、成果報告を行うとともに、オンラインによる成果報告も併用することにより対応する予定である。
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Research Products
(7 results)