2021 Fiscal Year Research-status Report
Artificial synaptic crossbar array memristors with interneuron function
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21K18723
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20314031)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 人工シナプス / メモリスタ / 介在ニューロン / クロスバーアレイ / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のニューラルネットワークのパーセプトロン型プラットフォームを、ハードウェアの観点から変革することを念頭に、ニューロモデュレーション機能を有する介在ニューロンを含むプラットフォームの創製を目的として研究を進めている。当該年度は、単体のメモリスタ素子にこの機能を持たせるために、素子の活性層を中心に4つの電極端子を配した4端子平面型メモリスタ人工シナプス素子を開発した。人工シナプス素子におけるシナプス重みを各端子間のコンダクタンスに対応させ、各端子への電圧入力条件を様々に変化させた電流-電圧特性の評価によって、同素子が介在ニューロン機能を有することを確認した。具体的には、還元遷移金属酸化物TiO2-xのエピタキシャル薄膜を用い、金属マスクを用いるプロセスと、数μmレベルの微細加工が可能なマスクレスレーザーリソグラフィを用いた微細パターン描画と電極金属・絶縁膜・メモリスタ材料の蒸着/リフトオフプロセスを用いて素子作製にあたった。4端子平面型素子の対角状に配置された二組のペア端子のうち、一組をシナプス前/後ニューロン、もう一組を介在ニューロンに見立てて、シナプス前/後ニューロン端子間のTiO2-xエピ層のコンダクタンスが介在ニューロン端子からの電界効果によって如何に変調されるかを、両端子への入力信号(電流・電圧パルス)の時間相関、強度相関、極性相関、頻度相関を変化させながら計測した。その結果、シナプス前/後ニューロン端子間のコンダクタンス値ならびに印加パルス当たりのコンダクタンス変化量が、介在ニューロン端子への信号入力に依存して変化することが判明し、ニューロモデュレーション機能によるシナプス重みの変調を模倣することができた。さらに、この機能を発展させ、脳・神経系の高次機能に相当する馴化、鋭敏化、連合学習機能を同素子に実装することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、介在ニューロン機能を有する人工シナプス素子として、4端子平面型のレイアウトを選択した。また、メモリスタ材料には、これまで申請者らがその物性を熟知している還元されたTiO2(TiO2-x)エピタキシャル薄膜結晶を採用した。同材料は、素子のコンダクタンスを制御する媒体(ドーパント)が酸素空孔であり、かつその分布が光学顕微鏡レベルで可視化できる利点があるため、素子の電気的特性とその特性を生み出す酸素空孔分布との一対一の関係を実験的に掴むことができた。今回の成果のなかで、ニューロモデュレーション機能に相当する素子コンダクタンスの変調を利用して、それを生体が有する脳・神経系の高次機能の実装に結びつけることができた点は意義深い。これらは、通常生体系で観測されている、馴化(例えば人が大きな音を聞いた当初は驚きの反応をしても、その音が繰り返されて無害であるとわかったときは反応を示さなくなる状態)、鋭敏化(逆にその大きな音を危険と感じて、それとは異なる小さな音にも敏感になる状態)、連合学習(例えば餌に反応して無条件に唾液を分泌する犬が、ベルと餌を繰り返し同時に与えられることでベルのみに反応して唾液を分泌するようになる「パブロフの犬」のような状態)であり、次年度に繋がる重要な成果であることから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
素子のコンダクタンス変調には、電界印加に伴うドーパント分布の変遷が効いている。そのため、これを理論実証するためにシミュレーション解析を行う必要がある。コンダクタンス変化を誘引するメモリスタ材料中のドーパントに着目し、有限要素法を用いたドリフトと拡散に関わるモデルシミュレーションによって素子活性層部分の電界・電流密度分布を解析して、ドーパントの挙動と分布形成機構を解明する。ここでは下記の第一原理計算の物理モデルも取り入れながらドリフト・拡散の連続の式を再帰的に解くことで、特定の電流注入ならびに電界印加条件下でのドーパント密度分布変化機構を明らかにする。また、ドーパント分布の変遷に対応して表出する原子・電子構造変化も調べる。実験解析には、走査透過電子顕微鏡法の原子直視Zコントラスト法および電子エネルギー損失分光法等を用いて、種々の状態にあるメモリスタ材料内や電極、絶縁膜界面近傍の化学組成と電子状態を計測し、その微細構造を捉える。理論解析には第一原理計算を用い、上記のシミュレーションによる局所電界強度分布をパラメータとして電界印加状態を再現し、原子移動の最小エネルギー経路を探索してドーパントの集積・散逸構造の安定性を精密に評価する。
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Causes of Carryover |
当該年度において支出を計画していた物品費は主に消耗品に充てる予定であったが、消耗品を適用する装置の不具合が発生したために使用することができなかった。また、主に研究成果発表のために当初参加を予定していた学会がコロナウィルス感染症対策のためオンライン開催となったことから、出張に関わる旅費を使用する必要がなくなった。その他の予算は主に共同利用装置使用料に充てる計画であったが、コロナウィルス感染症対策のために利用に制限が加わり、計画どおりに使用することができなかった。これらの次年度使用額のうち、物品費は装置の修理を完了させたうえで使用する計画であり、旅費は学会参加のための出張費として、その他は共同利用装置利用装置制限の緩和の状況を見て装置利用料として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)