2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18730
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 和利 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10563827)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ波発生 / 光電変換デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で実現する超高周波電磁波形生成システムは光波形生成部と光電変換部からなる。前者として2021年度は光コムから波長選択フィルタを用いて複数の光波長を選択して重ね合わせ、任意光波形を生成する技術を実現した。後者として2021年度は超広帯域フォトダイオード(3dB帯域600GHz)を用いて光波形を電流波形に光電変換し、フォトダイオードに集積された微小平面アンテナから空間へ電磁波を放射するシステムを実現した。さらに本研究では、空間における電磁波はインピーダンス整合の制限を受けず自由に合分波できるという性質に着目し、従来広帯域設計が必須と考えられていた光電変換デバイスについて、それぞれ異なる利得周波数に設計した複数のアンテナ集積フォトダイオードをアレー化したデバイスを作製した。これにより光波形に含まれる周波数成分が、それぞれの周波数帯域ごとに光電変換され、空間で元の波形を再現した電磁波が形成されるため、今後予定している繰り返し1THz以上の電磁パルス波形生成のみならず、任意電磁波形の生成が可能となる。波形と位相が揃ったTHz級電磁パルス波ができれば、パルス一つ一つに情報を載せた新概念のTHz級無線通信が可能となる。また、THz級電磁矩形波や電磁三角波が生成できれば物質や超高速デバイスの電磁波に対するサブピコ秒領域の過渡応答を明らかにすることができる。本研究成果により、THz級電磁波の新たな応用分野開拓の必須技術となる。 今年度得られた上記結果は、学術論文3件(査読あり)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
任意波形生成技術に関しては、挑戦的研究(萌芽)(H29-30)の一部として開発した高繰り返し光パルス発生システムをベースとして、25GHz間隔で発生させた光周波数コムから、波長選択フィルタを用いて複数の波長を取り出すシステムを構築してきた。さらに、波長の選択に加えて、波長ごとの強度と光位相を調整し、合分波の容易性という光技術の特長を利用した自己時間多重を併用することで、極めて自由度の高い波形設計ができるという特徴を有している。これらの技術を用いて、THz級(サブピコ秒分解能)の高繰り返し高精細任意光波形生成の原理動作の検証まで終了している。 デバイス開発に関しては、本研究代表らが300GHz帯で実現している8アレー光電変換デバイスについて、ボウタイアンテナの2電極間の長さをパラメータにとり、これにフォトダイオードの容量を考慮した電磁界解析により、異なる利得帯域を持つアンテナ集積フォトダイオードを設計、試作した。 波形測定技術に関しては、本研究代表者らが開発したTHz波自己相関計を用いて波形評価を行い。典型的な評価用波形として、電磁パルス波、矩形波、三角波を生成し、測定技術の性能評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究開発の成果を用い、THz級電磁波の新たな応用分野開拓の必須技術として、THz級の周波数成分を持つ任意電磁波形を生成する技術を確立していく。本研究は、光波形生成と、アレー状フォトダイオードでの光電変換という、それぞれ独創的研究として先導してきた技術を、帯域補完型アレーという新奇コンセプトのもとで融合し、さらに独創性の高い任意電磁波形生成に挑戦するもので、周辺技術への波及効果として、未知領域であるサブピコ秒領域での物質やデバイスの電磁波応答という新分野開拓への発展を探索していく。
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Causes of Carryover |
500円の端数が残金として生じたため。
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