2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒パルス高電界による白血球の活性化現象を利用した献血成分の有効活用
Project/Area Number |
21K18732
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 憲一 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 教授 (70311230)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ秒パルス高電界 / 生体応答 / 白血球 / 活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、好中球へと分化させたヒトHL-60細胞にナノ秒パルス高電界を作用させ、好中球細胞外トラップ (Neutrophil extracellular trap, NET) が誘導される現象について解析を行ってきた。これまでにNET形成を誘導するための電界強度にはしきい値があること、ナノ秒パルス高電界によるNET形成には細胞外カルシウムの存在が必須であること、電界強度のしきい値とカルシウム依存性は独立した要因であり、この二つが共に作用した場合にNET形成が誘起されることを示してきた。NET形成は細胞核内の染色体DNAが細胞外へと放出される現象であるが、ナノ秒パルス高電界処理した細胞を、細胞膜非透過性のDNA染色試薬であるSYTOX Greenで染色して顕微鏡観察したところ、細胞外にDNAの凝集体と考えられる蛍光染色が電界強度依存的かつカルシウム依存的に出現することが観察され、DNAの細胞外放出が顕微鏡観察により確認された。DNAの細胞外放出が起こる際にヒストンのシトルリン化が起こることが知られており、これはヒストンの塩基性を中和することでDNAの細胞外放出に促進的な反応と考えられている。そこでウェスタンブロッティング法によりヒストンH3のシトルリン化を解析したところ、シトルリン化を誘導するための電界強度にはしきい値があることやカルシウム依存性が確認され、ナノ秒パルス高電界がDNA放出と同様の条件でシトルリン化を誘導することを確認した。最後に、より多くの細胞を効率的にナノ秒パルス高電界で処理することを試み、細胞懸濁液の容量や細胞密度の至適化を検討し、より高い細胞密度において効率的にNET形成を引き起こす条件を明らかにした。
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