2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of highly sensitive pathogenic microbial sensors with nano-sized reaction fields
Project/Area Number |
21K18737
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は光導波路分光装置を用いて、下水を処理する活性汚泥中の硝化細菌(AOB)のRNA量を測定することに成功した。本手法ではAOBの16S rRNA(AOB-RNAと称す)と特異的に結合する2種類のDNA(プローブDNAと称す)を金ナノ粒子で修飾したAu-プローブと、活性汚泥から抽出したRNAをMgCl2を含むバッファー溶液に添加したものを試料とした。プローブDNAはAOB用のPCRプライマー(CTO189f A/B/CとRT1r)の塩基配列を参考に設計した。都市下水を処理する活性汚泥(A処理場またはB処理場)からRNAを抽出し、AOB-RNA濃度を上述のプライマーを用いて定量的逆転写PCR(RT-qPCR)により定量した。A処理場の活性汚泥またはNitrosomonas europaeaを添加した活性汚泥中のAOB-RNA濃度を測定した。活性汚泥から抽出したAOB-RNA濃度も、N. europaeaを添加した活性汚泥から抽出したAOB-RNA濃度(▲)も、RT-qPCRで測定した濃度と同程度であった。これより本手法では1.8×10の2乗から1.3×10の7乗 copies/μLの範囲で、RT-qPCRで定量した濃度に対する誤差27%から240%でAOB-RNAを定量可能であることがわかった。このように先行研究に比べて定量下限値が極めて低くなった理由として、全細菌とAOBでは使用するプローブDNAの塩基配列が異なりハイブリダイズした際の16S rRNAの立体構造や金ナノ粒子の位置関係が異なること、光導波路分光装置では金ナノ粒子の近接によってシグナル(散乱光)が増強されたことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、光導波路分光装置を用いて下水を処理する活性汚泥中の硝化細菌(AOB)のRNA量を測定することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究代表者と3名の研究協力者(博士課程学生、セルスペクト株式会社の研究者、研究補助員)で実施する。2年目は反応条件を最適化する。対象病原体は腸管出血性大腸菌とする。研究代表者はGenbank、EMBL、DDBJなどの遺伝子データベースを解析し、DNAプローブが結合する遺伝子の位置を決定する。チオール基を修飾したDNAの合成は外注する。博士課程学生はチオール基を介して金ナノ粒子にDNAを共有結合させる。企業研究者は大腸菌O157培養液や下水から遺伝子を抽出する。博士課程学生は光導波路分光装置(すなわち本センサー、科研費 若手研究(A)23686074で購入)で抽出液中の遺伝子濃度を測定する。実験補助員はPCR法で遺伝子濃度を測定する。本センサーとPCR法の結果を比較する。遺伝子の結合部位、反応液の塩濃度、ホルムアミド濃度といった結合条件を最適化する。さらに、光導波路分光装置の分析条件を変えることでセンサーの高感度化を試みる。導波路ガラスの材質(ガラスや石英)、厚さ、側面の角度、励起光の入射角度、反応液量、反応時間を最適化する。対象病原体は日本の水道水で検出例があるクリプトスポリジウムおよびカンピロバクターとする。最後に、国内各地の水道水源となっている河川水1Lをフィルターで濃縮し1mLとし、遺伝子を抽出し、上述の3種の病原体の遺伝子濃度を10分以内に本センサーで測定することを試みる 。目標測定下限値を水1L中100個とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究成果発表を目的とした学会に参加できなかった。次年度は研究成果発表のため、国内外の学会に参加する。この費用のために次年度に研究費を繰り越した。
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Research Products
(7 results)