2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel functional concrete materials using materials informatics
Project/Area Number |
21K18759
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西脇 智哉 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60400529)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | コンクリート / マテリアルズ・インフォマティクス / 高機能コンクリート / コンクリート3Dプリンタ / 自己修復コンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、新しい機能を付与したコンクリート材料について、近年発展が目覚ましいマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用することを提案し、材料開発に生かすための手法について検討するものである。ここまでの研究では、MIの根幹となる機械学習に必要な基礎データベースの構築ため、文献調査による情報収集とともに、これまで自ら実施したものを中心に実験パラメータと結果についての整理を行った。当初の予定通り、超高強度高靭性繊維補強セメント系複合材料(Ultra-High-performance Fiber Reinforced Cementitious Composite, UHP-FRCC)、自己修復コンクリート、コンクリート3Dプリンタの3項目について、それぞれを特徴づける実験結果を中心にデータ収集を行った。また、これらの結果に紐づく各材料の緒元について、使用した原材料や調合の情報だけに留まらず、練混ぜや打込み方法など施工プロセスに関する情報、養生の方法や期間に関する情報、試験方法に関する情報などできる限り幅広く網羅することを目標としてデータの収集を行った。これまで行われてきた、これらの機能性コンクリート材料に関する材料開発では、たとえば引張強度の改善を目的とした場合には水セメント比やシリカフュームなどの混和材などモルタルマトリックスの強度情報と、使用する補強繊維の種類・形状・力学特性や混入量に着目して実験的にパラメトリックスタディを繰り返すなどの手法がとられてきたが、これらのデータの範囲を超えて広くデータベース化することで、MIの強みを生かして膨大な実験の手数を必要とせずに期待する性能を得ることが期待される。このための基礎となるデータベース構築と、MIに必要な機械学習を行うためのプログラム構築の基礎検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の本研究課題に関する検討項目は、申請書に記載した通りこれまで自らに研究・実験結果の蓄積がある、UHP-FRCC、自己修復コンクリート、コンクリート3Dプリンタの3つの新しい機能性コンクリートを主な対象として、文献調査とこれまでの実験データの整理を通じて基礎的なデータベースの構築を目標とした。それぞれの材料に関する使用材料・調合・練混ぜ方法・打込み方法・養生の期間と方法などをインプットデータとして、また、それぞれの材料の特徴的な性能値(および、それに類する評価軸)をアウトプットデータとして整理することとした。たとえば、UHP-FRCCについてであれば圧縮強度・引張強度や破壊エネルギーなどの靭性指標、自己修復コンクリートであれば各種の試験結果に基づく自己修復率(気密性・力学特性など)、コンクリート3Dプリンタについては、積層性や積層体としての力学特性についての測定値が、具体的なアウトプットとして用いた基礎データである。2021年度は、直接的な実験パラメータに限定しない、できる限り広い内容をデータとして取り扱えるように、格納項目を増やしたデータセットとして構築するための基礎的な検討を行った。また、金属やセラミックス材料などで先行しているMIのためのPythonライブラリなどを参照して、コンクリート材料分野に適用可能な機械学習プログラムを構築するための基礎的な調査を行った。2022年4月時点で、これらの機能性コンクリート用として実行可能なプログラムを得る段階には至っていないが、その手ごたえを得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については、基本的に2021年度の検討を継続し、機能性コンクリートに関するデータベースの構築・拡充と、このデータベースを用いて機械学習を行うためのプログラムの開発に取り組む。データベースの構築については、ここまでと同様に出版された論文などアクセス可能な文献などからのデータ取得と、自身で蓄積してきた実験データを整理して使用可能な格納項目としての整備を継続する。プログラム開発については、現在調査を進めているMI先行分野でのプログラムなどを参照しながら、コンクリート材料に適用可能な形に調整することで開発を進める。また、この際には、別の研究課題として共同研究を進めている人工知能の研究者からのアドバイスをいただき、まずは実行可能な形に仕上げることを目指す。 一般にコンクリート材料分野では、一度に膨大なパラメータ検討を行えるコンビナトリアル実験のようなデータ収集手段を取ることは極めて難しい。そのため、地道な文献調査や自身の実験データの蓄積を元にデータセットを整備することを目標としているが、インプットとアウトプットの項目をある程度限定することで、少量の試験体を数多くの種類で作製して簡易な実験で結果を得るような方法を模索している。決め打ちで限定したパラメータのみの検討になると、MIが持つポテンシャルを阻害する可能性も危惧されるが、広く対象とするデータを用いた基礎的なMIによるアプローチでパラメータをある程度絞る方法についても検討を行いたい。2022年度中には、UHP-FRCC・自己修復コンクリート・コンクリート3Dプリンタのいずれかで具体的な調合設計まで行い、この調合について実際に試験体を作製しての実験検討を併せて行い、MIによる調合設計案の有効性を確認する。
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Causes of Carryover |
差額が生じた主な理由は、当初計画で2021年度に計上していた、マテリアルインフォマティクスの解析を実行するためのコンピュータを購入しなかったためである。研究を開始後には、既存コンピュータで実施可能な範囲での解析を優先し、基礎的なデータ収集に注力した。既存のコンピュータでの検討結果を踏まえることで、本検討に必要なスペックをより適切に満たすコンピュータを購入するために、2022年度の購入予定に切り替えた。また、予定していた情報収集や研究打ち合わせのための出張旅費も、コロナ禍の影響により見送りなったため執行しなかった。2022年度は、4月現在の状況からは行動制限が緩和される方向にあると考えられるため、慎重に状況を見極めつつ2021年度に見送らざるを得なかった出張も含めて、意見交換や情報収集などに必要な出張を行う。
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