2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Structural Reinforcement Method for Irregular Timber Frame Structure Using 3D Measurement and AM Technologies
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21K18762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 佳浩 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60883105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 公太郎 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20262123)
松本 直之 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (30814389)
伊東 優 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (90839523)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | AM技術 / 三次元計測 / 木造架構 / 構造補強 / 建造物保存 / ジャイロイド / CFRP |
Outline of Annual Research Achievements |
【AM材料の検証】AM材料の材料特性の検証を目的として、3Dプリント用CFRP材料の材料引張試験を実施した。3DプリンタにはRaise3D Pro2を用い、材料にはPolymaker PA6-CFを用いた。積層面内および積層方向での出力角度をパラメタとして実験を行い、強度や破壊形式の違いを確認した。 【補強部材の検討】補強部材形状の候補としてジャイロイド構造に着目し、圧縮試験を実施した。先行研究では3Dプリントの積層方向と載荷方向が一致しているものがほとんどであるが、補強部材には様々な方向から力が加わることが想定されるため、積層直交方向を載荷方向とした。材料にはアルミ合金とCFRPを用い、ジャイロイド構造の目の粗さを3通りに設定した。CFRP試験体では、目が粗い試験体では脆性的な破壊形式となったのに対し、目が細かい試験体では靭性を有する破壊形式が得られ、積層面間の強度が乏しいFDM方式の3Dプリント部材を構造部材として用いることができる可能性が示唆された。 【現地調査】最終年度に実証実験を行う実大木造建築物について、構造補強前の現況把握を目的として、実測調査、三次元計測、モニタリングを実施した。実測調査では、柱梁部材の配置確認および寸法計測を行い、正確な実測図面の作成および建物全体の構造解析モデルを作成するために必要な情報を取得した。三次元計測では、3Dスキャナ(EinScan HX)を用い、柱梁接合部および梁交差部について三次元点群データを取得した。計測用マーカーを貼付する必要はあるものの、表面の細かな凹凸を含め、丸太梁等の形状を詳細に測定できることが確認できた。モニタリングでは、加速度センサ(MEMS加速度センサADXL355、7台)と温湿度センサ(おんどとりTR-72wf、10台)を用いて、建物の振動特性および環境情報の継続的な観測を2021年10月から開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【AM材料の検証】当初の予定どおり、CFRP材料の材料特性の検証が実施できた。ただし、出力角度以外にも、温度や積層厚等の膨大なパラメタが存在するため、別のパラメタを設定した材料引張試験を継続して実施する必要がある。 【補強部材の検討】当初は簡易試験体を用いた実験を開始する予定であったが、補強部材に用いる幾何学構造としてジャイロイド構造が提案されたため、ジャイロイド構造自体の基本的な特性を確認するための研究に時間を充てた。ジャイロイド構造はセルサイズ(目の粗さ)や板厚を変化させることで構造性能を変化させることができ、補強部材の材料と全体形状(ミクロとマクロな形状)に加え、ジャイロイドのメゾスコピックな形状を調整することで、木造架構によりフィットした補強が行えるため、継続して研究を行う予定である。簡易試験体を用いた構造部材の検討については、ジャイロイド構造の研究と並行して令和4年度から開始する。 【現地調査】当初の予定どおり、補強前の実測調査を実施することができた。3Dスキャンについては、実測図に基づく構造解析結果やモニタリングデータを基に補強箇所を決定した後、改めて実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
【材料引張試験】CFRP材料については、出力温度や積層厚等をパラメタとした材料引張試験を実施する。補強部材の検討等と並行して、より強度の高い材料が必要になった場合には、連続炭素繊維強化プラスチック(c-CFRP)の利用を検討し、材料引張試験を実施する。 【補強部材の検討】ジャイロイド構造については、圧縮力に対する性能に影響を与えるパラメタを同定するための追加試験を行う他、引張試験およびせん断試験も実施し、より詳細な構造特性の検証を行う。また、補強部材をジャイロイド構造で充填することを想定し、直方体に限らない複雑な形状をジャイロイド構造で充填するための幾何学的なアルゴリズムの検討も並行して実施する。さらに、簡易試験体を作成し、実際の不整斉部材に対して補強部材を設計し、構造的な補強効果の他、意匠性・施工性などについての検討を実施する。 【実大木造建築物を用いた実証実験】実測図面を基に、建築物全体の構造解析モデルを作成した上で、加速度のモニタリングデータを用いて架構の剛性に関するシステム同定を行うことで、実況に応じたシミュレーション結果が得られるようなモデルを構築する。同モデルを用いて構造補強シミュレーションを行い、補強箇所を決定する。補強箇所決定後、実建物において3Dスキャンを実施し、現況部材の詳細な点群データを取得する。得られた点群データを用いて、実建物にフィットするような補強部材を設計・施工する。補強部材設置後にも継続してモニタリングを実施し、事前のシミュレーションで予測される補強前後での振動特性の変化が現れるかを検証する。
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Causes of Carryover |
簡易試験体を用いた補強部材の検討の代わりに、ジャイロイド構造に関する基礎的な実験を実施したため、令和3年度分の交付金のうち、簡易試験体の作成に用いる予定だった分を繰り越した。簡易試験体を用いた実験は令和4年度中の実施を予定しているため、令和4年度に実施予定の他の材料引張試験や現地調査と併せて、繰り越し分と新規請求分の交付金を使用する予定である。
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