2022 Fiscal Year Research-status Report
The Stratification of Family Properties in Super-Ageing Society
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21K18767
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 持ち家 / 住宅資産 / 相続 / 社会階層 / 付加住宅 / 住宅政策 / 住宅市場 / 空き家 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を形成する日本では、その住宅事情の将来を展望しようとするとき、すでに蓄積した住宅ストックをどう利用するのかが政策形成上の新たな問いになる。住宅問題研究の分野では、「世帯単位」の分析が重ねられた。しかし、高齢化が進み、住宅ストックが増えた社会では、「複数世代にわたる家族」が、全体として、どの程度の量・質の持ち家をどのように所有し、その利用について、どういう戦略をもつのかが、住宅事情に強いインパクトをおよぼす。本研究は、複数世代にまたがる家族の所有する住宅の全体を「家族住宅不動産」と定義し、それがどのように所有・利用されるのかを解明するとともに、その階層化に注目するところから、住宅事情を形づくる新たなメカニズムを明らかにし、住宅ストック活用政策の検討に貢献することを目的とする。ここには、「世帯単位」分析を中心としてきた住宅問題研究の領域に「家族単位」分析を導入しようとする意図がある。 以上の観点から世帯主55~74歳の世帯を対象とするウェブアンケート調査を実施し、その「家族住宅資産」の実態を把握した。この年齢層は、親世帯の住宅資産を相続し、あるいは相続する予定をもつ場合が多く、さらに、子世帯の持ち家購入を支援することがあり、その意味で、家族住宅資産形成の“結節点”を形成する。調査の結果は、超高齢社会の上位の階層には複数世代にわたって住宅資産をさらに増やす「蓄積家族」が存在し、下位の階層では、親世代から子世代にかけて、住宅資産の目減りを経験する「食いつぶし家族」が増えるという仮説を実証するものとなった。さらに、最下層には、複数世代にわたって住宅をいっさい所有せず、賃貸セクターにとどまる「賃貸家族」が存在することがわかった。本調査から、「複数世代にわたる家族」の住宅不動産所有の階層化が示され、「家族単位」分析による住宅研究の有効性・必要性の主張が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染拡大のため、遅れていたアンケート調査を実施することができ、貴重な調査結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査結果の分析をさらに深めるとともに、住宅資産に関連する政策形成・実践の実態を調べ、さらに、家族住宅不動産の理論検討を進め、それによって、住宅研究、社会階層研究の新たな展開に貢献したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、昨年度に研究がほとんど進まず、本年度に研究の遅れを大幅に取り戻したが、依然として、少し遅れている面があるため、次年度使用額が残っている。次年度には、調査結果の分析と研究全体のまとめに向けて、人件費、旅費などとして、助成金を使用する計画を立てている。
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