2021 Fiscal Year Research-status Report
Explicit method for unsteady fluid dynamics simulation
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21K18770
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70628213)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 数値流体解析 / 陽的解法 / 屋外風環境 / キャピティー流れ / 実街区 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,反復計算を伴う陰的解法である現在の数値流体解析手法を抜本的に見直すことで,非定常シミュレーションを普及させるために,理論研究展開と応用研究展開を随時行うことで,数値流体計算手法の提案と応用展開を進めることを研究計画としている.初年度となる2021年度は,数値流体解析手法の理論展開に特に注力し,非圧縮性を仮定しない基礎方程式を見直すことで,空気の膨張と圧縮による密度変化を簡略的に表現した空気密度の最適な時間発展方程式の提案を定式化した.この際,気体分子運動論の概念を適用することで,本来分子の運動に伴う力積として定義される圧力を,計算格子幅と計算時間幅により定義される仮想粒子の力積として再定義する手法を考案した.この概念により,気体の状態方程式に変わる圧力-密度関係式を得ることができた.これらの理論は,これまでに用いられている擬似圧縮手法のモデリングにおける理論的根拠を与えるものである.さらに,これらの理論展開をもとに,圧縮系連続式,ナビエ・ストークス方程式,圧力-密度関係式からなる陽的数値流体解析の方程式体系を整理し,数値流体モデルとして有限体積法を用いた解析コードを実装した.それに加えて,類似した手法である従来法の擬似圧縮手法との差異を明確にすることを目的として,従来法の詳細なレビュー研究及び比較研究を進めた.それにより,本提案手法と従来法の類似性を認める一方で,本手法ではモデルパラメータを格子解像度で表現できるという利点を明確にした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,数値流体解析手法の理論展開に特に注力し,気体分子運動論の概念を適用することで,本来分子の運動に伴う力積として定義される圧力を,計算格子幅と計算時間幅により定義される仮想粒子の力積として再定義する手法を考案した.これらの概念を具体的に定式化し, この概念により,気体の状態方程式に変わる圧力-密度関係式として表現できることを示した.この成果は,2021年度中に研究論文として成果発表している. 加えて,類似した手法である従来法の擬似圧縮手法との差異を明確にすることを目的として,従来法の詳細なレビュー研究及び比較研究を進めた.それにより,本提案手法と従来法の類似性を認める一方で,本手法ではモデルパラメータを格子解像度で表現できるという利点を明確にした.これらの比較研究の成果は,2021年度中に投稿済みであり,現在査読中となっている. さらに,2022年度での応用展開に向けて,三次元模型の数値流体解析の準備を進めてきた.これには,従来法に加えて新しい提案手法をオープンソースコードに実装する必要があり,コード開発を中心に行った.さらに,計算対象として単体模型や実街区の設定などの準備をすすめた. 以上のことから,概ね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,応用展開を中心に本研究課題を遂行することを想定しており,対象となる三次元模型周辺気流や実在街区周辺気流を対象として三次元流体計算に本モデルを拡張するとともに,非定常解析モデルとしてラージエディーシミュレーションの実装を行うことを計画している.第一に,選定した単純模型及び街区模型の三次元データを下に,計算メッシュデータを生成する.本提案モデルでは,メッシュ幅が音速のモデルパラメータとなるため,提案手法における最適なメッシュサイズが得られるようにパラメータスタディーを実施する.従来の数値流体解析手法では,計算精度に焦点を当て,様々なメトリックにより計算結果の妥当性検証が行われているが,これに加えて,本手法では計算時間を重要な要素と位置づけ,再現性と計算時間の観点において最適なメッシュサイズの設定方法を検討するため,複数のメッシュ生成を行う.第二に、三次元流体解析に対する提案モデルの実装を行う.本課題では,技術的な負担の軽減を目的として,オープンソースの数値流体解析コードを活用することを計画している.オープンソースコードを用いることで,モデルの有用性をいち早く示すとともに,並列化への対応や今後のモデルの発展のために資する技術となるとことを目指す.以上を実装した解析コードにより,角柱や街区を対象とした非定常解析を実施することにより,従来法に比べて陽的計算が効率的な数値解法であることを実例を持って示し,今後の数値計算の発展に資する解析アルゴリズムの提案と実用性について示す.最終年度となる2022年度は,これらの成果を対外的に発表することを計画しており,国内外会議及び国際論文誌を中心に,これまでの研究成果を報告する予定である.
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Causes of Carryover |
旅費として計上していた80万円は,感染症の影響により国内外会議がキャンセルされたことによる.2022年度は,複数の会議が予定されており,それらの旅費として支出予定である. 人件費として,200万円計上していたが,2021年度は適任者を選定することができず,支出を2022年度に繰り越すこととした.2021年度には,研究補助者の人件費として支出することを予定している. その他は,主に学会参加費及び論文投稿費用を想定していた.2022年度に繰越し,対外発表費用に充てる.
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Research Products
(7 results)