2023 Fiscal Year Research-status Report
中国考古資料を用いた法隆寺建築様式の成立についての研究
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21K18772
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
内藤 元太 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (00838394)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 法隆寺 / 建築史 / 中国古代建築 / 雲肘木 / 中国建築史 / 古代建築 / 高句麗 / 建築遺構 |
Outline of Annual Research Achievements |
法隆寺西院伽藍諸堂の建築様式の成立を研究するには考古資料を扱う必要があるが、建築史家がこれらの資料に着目することはまれで、1980年代以降研究が盛んになされている状況ではない。この状況を踏まえ、本研究では考古学的な視点から、現地調査を中心に資料を悉皆的に集成し、主に唐代以前の建築を表現した考古資料と法隆寺系建築様式とを対比することで、法隆寺系建築様式成立の背景を探ることを目的としている。 令和5年度は新型コロナウイルス流行後初めて山西省、広東省、河南省、内モンゴル自治区、遼寧省、陝西省などで中国の遺跡、博物館等を訪れ書籍等で報告がない資料等多数の古代建築関連資料の調査を行うことができた。 これまでの研究で5世紀末から6世紀初頭にかけて、少なくとも北朝の地域では絵画等の建築表現が大きく変化することを指摘しているが、資料調査ではその傾向を裏付ける遺物を見出すとともに、発掘遺構の検討から、全ての柱が明礎立の全木構造建築が確立するなど大きな構造変化が当該期に起こった可能性を見出しつつある。また、トラス構造を構成する要素であった人字拱の機能が形骸化していく様相に着目すると、北魏の壁画墓や石窟等での建築表現と高句麗壁画墓の建築表現は同調した変化をしていることが確認できる。これらの変化は「土壁」や「桁行の構造」を中心としたものから「土壁に頼らない梁行の構造」を中心としたものへ屋根荷重支持の主体が変化することと関連して起こった可能性がある。法隆寺系建築様式はこの5世紀末から6世紀初頭に確立した建築様式を基礎とした構造からなる。その成立過程を引き続き追及していく。 上記の研究内容については令和5年4月15日の建築史学会大会、令和5年6月発刊の由良大和古代文化研究協会研究紀要の論文、 令和6年3月9日に中国にて開催された国際学術会議、令和6年3月16日の第227回歴史考古学研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では中国における資料調査が肝要であるが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限の余波により、現地での資料調査予定が大幅に遅滞している。令和5年度は現地での調査の知見も基に論文1本と発表3本を行ったが、本研究課題の総括となる論文を今後執筆する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度までの海外での資料調査で得られた知見を総括した論文を今後執筆していく。特に魏晋南北朝時代までの中国建築の構造変遷にかかわる内容をまとめ、法隆寺系建築様式の構造と対比していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限の余波により、現地での資料調査予定が遅滞したため差額が生じた。資料調査と資料のとりまとめに差額分の助成金は使用予定である。
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