2021 Fiscal Year Research-status Report
超高感度マルチパスレーザーヘテロ干渉計の開発と衝撃波前方プリカーサ現象の解明
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21K18778
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松井 信 静岡大学, 工学部, 准教授 (90547100)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | マルチパスセル / レーザー吸収分光法 / 高感度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,マルチパスセルの高感度化の上限を実験的に検証し,課題の洗い出しを行った.マルチパスセルの感度向上率の評価手法として760nm帯域のDFBレーザーを用いて大気中の酸素分子をターゲットとしたレーザー吸収分光法(LAS)を使用した.マルチパスの反射回数に相当する感度向上率は光路長3.5mのシングルパスLASに対してマルチパスの積分吸収係数何倍になるかでセルの長さを考慮して推定した.これまでの研究において,セルのミラー間距離,入射レーザーの位置,角度をパラメトリックに振った数値計算により直径50mmのミラーを用いたセルに対して最大で5596倍の感度向上を可能とする条件を見つけることに成功しているのに対し,実験で得られた最大感度向上率は1790倍であった.計算と実験の乖離の原因を検証した結果,最大感度(5596倍)を成立させるアライメントの許容誤差はミラー間隔が6um以下,レーザー入射角が0.01度以上の精度が必要であることがわかり,これは実験装置のアライメント分解能より一桁高いものであることがわかった.一方で1790倍のパスに対する許容誤差は装置のアライメント分解能以下であったため実験結果は妥当であると言える.以上により,計算で得られる最大感度を達成することはできなかったが,従来のマルチパスセル感度向上率である100倍を一桁以上上回る感度を持つマルチパス条件を実証することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験的にマルチパスセルの感度上限の検証を行った.その結果,アライメントの許容誤差を考慮すると数値計算で予想された通りの結果を実証することに成功し,従来に比べ一桁以上高い感度の高いマルチパスセルの確立に成功した.一方で反射回数の増加はレーザー光の重なりの増加につながり,その結果干渉効果によりSN比が悪化する(エタロン現象)ことが確認された.最終的なレーザー干渉計にはこの効果は極めて重大な影響を与えるため,この解決を次年度に検証する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により,従来より一桁以上高い1790倍の感度向上を可能とするマルチパスセルの確立に成功した一方,干渉効果によりSN比が悪化する(エタロン現象)が確認された.この問題を解決するためにレーザー光を音響光学素子(AOM)でパルス化することを検討している.パルス化によりレーザー光をミラー間距離程度にすれば干渉効果を抑制することができる一方,レーザー干渉計の観点からはパルス幅が位相差検出のSN比および時間分解能に影響する.次年度はこの関係を実験的に検証する予定である.
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