2022 Fiscal Year Research-status Report
超高感度マルチパスレーザーヘテロ干渉計の開発と衝撃波前方プリカーサ現象の解明
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21K18778
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松井 信 静岡大学, 工学部, 准教授 (90547100)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | マルチパスセル / 高感度化 / レーザー吸収分光法 / レーザー干渉計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,760 nm帯域のDFBレーザーを用いてJAXA宇宙科学研究所が所持する膨張波管試験チャンバ内にマルチパスシステムを設置し,酸素分子をターゲットとしたレーザー吸収分光法により感度向上率の検証を行った.その結果,空気流,流速6 km/sに対して二桁以上の感度向上に成功した.また実験前後の吸収信号の強さから,実験時の破膜によるアライメントへの影響はないことがわかった.次に本システムの光源をHeNeレーザーに変更,マルチパス後のレーザー光と参照光を同期させることでレーザー干渉計へと改良し,衝撃波管モードでの作動により衝撃波前方プリカーサー領域の電子密度計測を試みた.作動ガスは電離度が高いアルゴンを用い,衝撃波速度は6 km/sの気流に対し,光路長840 mmでは干渉信号が取れたものの(位相安定性:10.5 deg,検出限界:3.8x10^20 m-3),光路長2100 mmでは位相安定性が悪化し,検出限界が低下した(位相安定性:267 deg,検出限界:3.9x10^21 m-3).位相安定性が悪化した原因を検証するため,防振光学台上に干渉計を組むことで光路長と位相安定性の関係を検証した.その結果,光路長増加によるレーザー強度の低下による位相安定性への依存性は低く,振動が主原因だと考えられる.衝撃波管及び試験部に接続したキューブチャンバはアルミニウム製であり,第二隔膜破膜時の振動が伝わる速さは6.38 km/sと衝撃波速度と同程度であるため,アライメントにズレが生じ,位相安定性が大きな値となったと考えられる.次年度は試験部内のマルチパスシステム全体を防振することで感度向上を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はマルチパスシステムを膨張波管・衝撃波管気流診断に適用し,性能評価及び問題点を明らかにした.その結果,マルチパスシステムを用いたレーザー吸収分光計測には作動時の振動の影響はなかったが,マルチパスレーザー干渉計では振動による位相安定性への影響が大きく,光路長を大きくしてもSN比が低下し,結果として検出限界が向上しないことがわかった.したがって,さらなる検出限界の向上は破膜時の振動からマルチパスシステムを切り離すことが重要であり,次年度で取り組む課題が明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
マルチパスシステムを用いたレーザー吸収分光システムはJAXA角田宇宙センターに設置されている世界最大級の膨張波管HEK-Xに適用する.CFDの予測によると流速7 km/s以下では解離度が低く酸素分子の吸収ライン760 nmを用い,解離度が高い7 km/s以上の高速流に対しては酸素原子の禁則ライン636 nmを用いて気流診断を行う.マルチパスレーザー干渉計は引き続きJAXA宇宙科学研究所の衝撃波管を用いて衝撃波管と計測システムを除振台を用いて振動を緩和し,位相安定性を確保しつつ光路長を伸ばすことでプリカーサー領域の電子密度測定を試みる.
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