2021 Fiscal Year Research-status Report
座屈モードや振動モードの幾何学的パターンの周期性を用いた大型構造物の最大挙動計測
Project/Area Number |
21K18780
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岩佐 貴史 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (90450717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 恵一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (00770736)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 大型構造物 / 座屈モードと振動モード / 幾何学的パターン周期性 / 変位の空間分布 / 最大挙動計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,座屈モードや振動モードに見られる「幾何学的パターンの周期性」を利用して,大型軽量構造物の変位応答上限値を静的・動的問題を問わず限られた離散点データから一定の信頼度で推定するための方法論の構築に取り組んでいる. 2021年度は,1)円筒シェルの座屈現象,2)衝撃負荷を受ける薄膜の振動現象を対象に計測実験と有限要素解析を行い,変位の空間分布特性について検討した.なお,検討にあたっては過去に取得した計測データも利用した. 初めに,円筒シェルの座屈現象では有限要素法による擬似分岐座屈解析により座屈モードの飛び移り現象を再現し,1~3次モードの変位の空間分布は同じ分布特性を持つことを示した.この結果は過去の実験結果と類似な傾向を示しているが,実験ではモード毎に変位の空間分布に若干の違いが観測されていた.この違いは初期不整(載荷前の円筒シェルの初期形状等)によるものであり,変位応答上限値を推定するには実際の変位の空間分布に見られる「ばらつき」の性質を明らかにすることが重要となる.そこで,次年度はこのばらつきを統計的に処理し,その性質を明らかにすることで変位応答上限値の推定法の構築に繋げていく. また,衝撃負荷を受ける薄膜の振動現象では計測実験と数値シミュレーションを行い,任意の周波数帯のスペクトル値の空間分布特性を検討した.その結果,座屈モードの場合と同様に振動モードも初期不整等の不確定性の影響を受けスペクトル値の空間分布にばらつきが観測された.そこで現在は,このばらつき特性を統計的に検討し変位応答上限値の推定法の構築を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,座屈モードや振動モードの形態学的特徴を表現する「変位の確率モデル群」を探索し,そのモデル群を基に変位応答上限値を推定しようとするものである.しかし,円筒シェルの座屈現象や薄膜の振動現象を対象に数値シミュレーションや計測実験を行い,それぞれの視点からデータを検討したところ,変位の空間分布は初期不整等の不確定性に影響を受けることが分かってきた. 変位の空間分布を利用して変位応答上限値を正しく推定するには,この不確定性の影響を適切に評価する必要がある.そこで,変位の空間分布の違いを群として整理するのではなくばらつきとして捉え,このばらつき特性を統計的に明らかにすることで推定法の構築に繋げることを試みている. その意味では申請時に想定していた方法とは異なる方法で推定法の構築を検討しているが,現時点ではこちらの方が適切なアプローチ法と考えており研究目的である変位応答上限値の推定法の構築に近づいているものと考えている.なお,変位の空間分布を群として整理する当初の方法も引き続き検討を続け,現在のアプローチ法と比較することで研究の進展次第で柔軟に対応できるようしておく. 一方,初年度に予定していた実験ジグの製作準備については若干の遅れが生じ,実験ジグの準備を2年目の前半に行うこととなった.しかし,当初予定していた計測実験には影響せず予定どおり行えるものと捉えている. 以上,変位応答上限値の推定法の構築においては異なるアプローチ法の検討を始めている状態であること,実験ジグの製作を次年度に繰り越したこと、の理由から現在までの進捗状況は「やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,円筒シェルの座屈現象と薄膜の振動応答を対象に研究を進めてきた.今後は音響負荷や衝撃負荷を受けるハニカムパネルの計測実験を行い振動応答スペクトルの空間分布について検討する.ここでは,計測データから振動モードを抽出し,スペクトル値の空間分布とモード形状との関係について検討する. また,実験結果次第であるが初年度の結果と同様にハニカムパネルの振動応答においても初期不整等の不確定性の影響が強く観測されれば,振動応答スペクトル値の空間分布のばらつきを統計的に検討し,スペクトル上限値の推定法の構築に取り組んでいく.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により出張費を利用することがなく,当初予定していた額をそのまま次年度に持ち越すこととした.また,2年目にハニカムパネルの音響試験と衝撃試験を実施する予定であり,そのための実験ジグの設計製作を当初は初年度に行う予定であったが,設計の詳細に関して検討が遅れ製作は次年度にせざるを得なくなった.その結果,実験ジグの製作費(材料費含む)を次年度に繰り越すこととなった. 以上の理由により次年度への繰り越し金が発生したが,旅費,実験ジグ製作費は使用目的が明確である.コロナも弱毒化し且つ次年度は共同実験を計画していることから,出張旅費の繰越金はそのまま出張旅費として利用する予定である.また,実験ジグ製作費も計測実験を踏まえて2022年度の前半で使用する予定となっている.
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