2021 Fiscal Year Research-status Report
Data-driven approach for understanding chaotic phenomena in spacecraft orbital mechanics
Project/Area Number |
21K18781
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂東 麻衣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40512041)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | データ駆動科学 / バリスティックキャプチャー / 多体問題 / 宇宙機 / カオス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在多くの分野において導入されつつあるAI・データサイエンスの手法は,複雑なシステムをモデル化,予測,制御する新たな方法を提供している.近年,月以遠の深宇宙探査が注目を集める中,特に起点となる月近傍領域への低エネルギー遷移軌道はその重要性を増している.バリスティックキャプチャ軌道についても多くの研究が報告されている.さらに,バリスティックキャプチャ軌道を用いた地球―月軌道の最適化も国内外で多く行われている.しかし,バリスティックキャプチャ軌道を含むカオス的な領域を含んだ軌道設計法は現象のメカニズムにおいていまだ未知の点が多い.また,機械学習によりカオス領域の軌道をモデル化しようとする試みはあるものの,データ駆動モデリングによる試みは国内外でも例がない.宇宙機の多体力学系の運動は解析解がないため,軌道設計のための大規模な数値計算が行われておりデータサイエンスの応用が期待される.惑星に一時的に捕獲される現象はバリスティックキャプチャとよばれ,大気抵抗などを使わずに重力のみによって,惑星に最接近し,場合によっては惑星の周りを周回することができる.しかし,バリスティックキャプチャをはじめ,カオス的な領域を含んだ軌道設計法は現象のメカニズムにおいていまだ未知の点が多くモデル化が困難である.本研究はデータサイエンスの手法を取り入れ,宇宙機多体力学系のカオス的な軌道の代表例であるバリスティックキャプチャー軌道を復元・予測するモデルを生成,天体力学におけるカオス的現象のメカニズムの解明と宇宙工学への応用を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究提案では,天体との再接近という物理的イベントとデータとをリンクさせることにより,領域間の軌道の遷移を引き起こす現象のモデリングに挑戦する.多体力学系においては,天体との接近により軌道がカオス化する現象がしばしば観測されるが,カオス的な挙動を示す力学系に対して,断続的な強制力を用いたHAVOKという方法でカオス的な振る舞いをモデリングした例が先行研究で報告されている.本研究では,月との接近イベントを強制外力としてHAVOKを用いたモデリングし,カオス的な状態遷移に特徴的な機構を発見した.強制外力項が励起される状態を位相空間において解析することで,バリスティックキャプチャー軌道生成の力学的メカニズムをデータ駆動科学のアプローチにより明らかにすることに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
多体力学系の固有構造を利用したデータ駆動型モデルの構築する.強い非線形性・不安定性を持つため,状態量の時間的推移を表すデータをどのように生成し,データ駆動力学系を構築するかが埋め込まれた非線形現象を理解するための鍵となることが明らかとなった.様々な時空間パターンを持つ非線形現象を抽出するためには,考えている領域全体のデータを周波数空間の広い領域において得ることが必要であるが,不安定多様体方向に伝播された軌道は直ちに発散してしまうため,十分な密度のデータをとることが不可能である.このため本研究では,力学系のセパラトリクスにより分断される領域に注目し,カオス的な領域における軌道の集団的振る舞いをモデル化する方法を提案する.
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Causes of Carryover |
発表予定の国内会議,国際会議がオンライン開催となり旅費計上分が不要になったため. 元々オープンアクセス化を想定していなかった投稿中のジャーナルのAPC経費に計上し,オープンアクセス化を進める.
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