2021 Fiscal Year Research-status Report
Open atmospheric nitridation on a metallic surface using laser irradiation
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21K18799
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 教授 (10400409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲井 正昭 近畿大学, 理工学部, 教授 (20431603)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 金属表面窒化処理 / 空気中施工 / レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究実施者らが発見した「レーザー照射による空気中での金属表面窒化現象」の機序解明を通じて、当該技術の産業への応用可能性を探ることを目的としている。この指針に沿い、令和3年度は、レーザー照射に伴う空気中窒化現象の機序解明に重点を置き研究をおこなった。具体的には、種々金属材料表面に、同一条件(プロセス条件)でレーザ照射をおこない、その表面に形成した皮膜を分析して比較することで、皮膜形成に及ぼす金属材料物性の影響を調べた。 金属材料としては、空気中窒化現象がすでに確認できているチタン材料の他に、ジルコニウム、純鉄および銅を選択した。これら表面に、チタン材料で窒化皮膜形成が確認されている条件にてレーザー照射をおこない、その後に形成した表面皮膜を、X線光電子分光法、走査型電子顕微鏡、X線回折法にて調べた。加えて、レーザー照射時に発生するプラズマも分光解析した。 チタン材料の他に、ジルコニウム表面にも、膜厚マイクロの窒化皮膜が形成し、この皮膜は窒化ジルコニウムであることが明らかとなった。純鉄表面にも窒化皮膜は形成したが、その皮膜膜厚は1マイクロ以下と薄く、さらに窒素の含有量は数at%程度でありチタンやジルコニウムと比較して著しく低かった。銅の表面には皮膜形成は全く認められず、窒素の侵入は観察できなかった。 電子顕微鏡像およびプラズマ解析結果から考察すると、チタンおよびジルコニウムでは、レーザー照射に伴い高温プラズマが発生し、これにより金属表面が溶融し、窒化物形成に至ったことがわかった。純鉄でも、高温プラズマの発生および溶融の痕跡が見られたが、表面には窒素が放出された痕跡(脱気の跡)が観察され、このことが窒素の低濃度化の要因になったと推察された。また銅については、溶融の痕跡が小さかった。空気中での窒化皮膜形成は、表面の溶融および窒素の取り込みが重要要素であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、機序の解明と応用可能性の探索である。この2つの目的のうち、令和3年度は、種々金属材料への表面処理およびその解析を通じて、機序の解明へとつながる成果を得ることができた。これは当初計画に沿ったものであるので、研究はおおむね順調に進展していると評することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的である、機序の解明と応用可能性の探索のうち、前者については令和3年度の研究により概ね達成できたと考える。従って、令和4年度以降は、応用可能性の探索へと移行していく方針である。産業への応用を考えると、鉄鋼材料への適用が大きく期待される。他方、現在のレーザー処理条件(プロセス)では、チタンおよびジルコニウムには窒化皮膜形成できるが、鉄鋼材料は不得手のようである。そこで今後の研究では、特に鉄鋼材料に着目し、純鉄以外の種々鉄鋼材料(例えば、工具鋼、ステンレス鋼など)への適用可能性や、さらに純鉄に膜厚皮膜を形成できるレーザー処理条件の探索などを中心におこなっていく。
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Causes of Carryover |
鉄鋼材料への空気中レーザー窒化処理の可能性を探索するためには、レーザー発振装置を新たに導入する必要があると判断した。然るに、装置選定には、令和3年度の研究成果による機序解明が必要である。そのため装置導入を令和4年度に後送りすることとし、そのため次年度使用額が生じた。
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