2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ空隙検出のためのサブミリメートル空間分解能を有する陽電子消滅装置の開発
Project/Area Number |
21K18812
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上殿 明良 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20213374)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ空隙 / 空間分解能 / 陽電子消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽電子は電子の反物質で、固体に入ると電子と消滅した後にγ線を放出する。消滅γ線のエネルギー分布や、陽電子と電子の消滅が生じるまでの時間(陽電子寿命)を測定することにより、空孔型欠陥(単一原子空孔からナノメートル程度の空隙)を非破壊で感度良く検出することができる。本手法は、金属、セラミックス、半導体、高分子等、さまざまな材料について、その機械的性質の発生要因、あるいは劣化の状態を原子レベルで評価するために使用されてきた。また、陽電子を単色、エネルギー可変のビームとして取り出し、そのビームを収束することもでき、ビーム直径が十ミクロンオーダーの「走査型陽電子ビーム」も開発されている。しかしながら、このよう実験が可能な施設数は限定的で、多くの研究者が容易に実験できる状況にはない。 一方、材料の劣化や破断を研究する場合、サブミリメートルからメートル程度の空間分解で、それらの原因を探ることは多い。この程度のオーダーの空間分解能で原子や分子のサイズに対応する空隙の情報を得ることができれば、劣化や破断機構について新たな知見が得られると考えられる。本研究の目的は、サブミリメートルのオーダーの空間分解能を持つ陽電子消滅実験装置を開発し、構造材料、特に、CFRPの劣化、破断における高分子、カーボンファイバー、及びその界面における空隙の振る舞いを明らかにすることにある。本研究により、複合材料の劣化、破断現象を、原子、分子オーダーの情報から理解し、広いスケールで連続的に変化する現象を理解するための学理構築の発端としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陽電子線源として22Naの水溶液を使用した。この水溶液をマイクロピペットで、厚さ7.5μmのカプトン上に滴下した。なお,このカプトンは滴下前に撥水加工を行っている。線源強度を十分確保した場合、線源サイズは1ミリ程度、やや線源強度をやや犠牲にすれば、サブミリ程度の線源スポットを形成できることを確認した。 作成した試料を用いて用いて、引張試験機で加工した各種の高分子について試料位置の関数として陽電子寿命を測定している。一方、測定に十分な時間分解能を確保しつつ計数率を上昇させるための装置改造、改良も併せて実施している。これにより、線源強度が弱くても、現実的な時間内でデータが取得できるようにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、陽電子線源スポットの縮小を検討すると共に、ドップラー拡がり測定装置、陽電子寿命装置の高計数率化のための改良を実施する。
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