2022 Fiscal Year Research-status Report
トポロジカル傾斜ディラック半金属における室温巨大熱起電力効果の開拓
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21K18813
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤岡 淳 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80609488)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 熱起電力効果 / 遷移金属酸化物 / 光学伝導度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に、電子ドープしたCaPd3O4において室温で比較的高い熱電性能が見られることを明らかにした。その起源を電子状態の視点から明らかにすることを目的として、本年度はCaPd3O4における電子構造解析を行った。ノンドープのCaPd3O4について反射分光によって光学伝導度スペクトルを求めたところ、低温において約0.1eV程度の電荷ギャップが観測された。本系はPBE近似に基づく電子状態計算に基づいて対称性によって保障された傾斜ディラック半金属の候補物質であるとの提案がなされているが、実験結果はそれと相容れない事を示している。そこでHSE近似に基づく電子状態計算を共同研究で行ったところ、バンドギャップが0.25eV程度開いた狭ギャップ半導体状態である可能性が高いことが明らかとなった。また、計算結果から価電子バンドは主にPd 4dz2-r2の軌道状態からなり、伝導バンドはPd 4dx2-y2軌道状態からなることが分かった。また、伝導バンドの方が価電子バンドよりもバンド幅が比較的広いことが明らかとなった。これは平面4配位したPdO4におけるPd4d軌道と頂点酸素の軌道の混成具合から単純に予測される結果と一致している。 また、電子相関効果でバンド幅の繰り込みが生じた強相関ディラック半金属ペロブスカイト型CaIrO3における磁場中の電気伝導特性評価も行った。超高圧合成法によって合成したペロブスカイト型のCaIrO3の単結晶試料において東京大学物性研究所国際強磁場施設において低温・パルス強磁場中における磁気輸送特性の測定を行った。磁場を直方晶のa軸に印加した場合とc軸に印加した場合で著しく磁気抵抗率に違いが生じる事が分かった。数値計算によるランダウレベルの計算結果とも合わせると、Ir5d軌道のホッピングの異方性によって大きな磁場方位依存性が生じている可能性が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NaPt3O4型CaPd3O4では光学測定による電子状態評価が問題なく進み、理論予測に反してトポロジカル半金属とは異なる状態であることが明らかになった。この結果を踏まえて、電子ドープした系における電子状態を評価するために電子占有状態の状態密度をより正確に観測することができる光電子分光の測定および解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
電子ドープしたCaPd3O4における電子構造を実験的に明らかにするためにエネルギー高分解能の光電子分光測定および解析を進める。既に得られている第一原理計算によって明らかにした電子構造と比較検討を行い、電子ドープ系で見られている高い熱電性能の起源を明らかにすることを目指す。 また、遷移金属酸化物に限定せず強相関トポロジカル半金属の候補物質を幅広く探索し、ゼーベック効果、異常ネルンスト効果などの諸物性の探求も進める。
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