2023 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル傾斜ディラック半金属における室温巨大熱起電力効果の開拓
Project/Area Number |
21K18813
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤岡 淳 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80609488)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ゼーベック効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
d電子系のトポロジカル半金属の探索の観点からNaPt3O4型のCaPd3O4の電荷輸送特性評価を行った。本系では理論計算によってPd4dを主成分とするバンドが立方晶の対称性によって保障されたディラックノードがフェルミエネルギー近傍に生じる可能性が予測されている。この可能性を実験的に評価するためにまず高品質の多結晶を超高圧合成法に依って合成し、電荷輸送特性を調べた。電気抵抗率は低温で増大し半導体的な温度依存性を示した。電子状態を光学測定によってを調べたところ0.1eV程度の光学ギャップが見られ、本系は狭ギャップ半導体である可能性が高い事を明らかにした。CaをLaで一部置換することで電子ドープしたCa1-xLaxPd3O4を合成し、熱電特性を評価した。その結果、x~0.03程度の組成では室温領域で出力因子が7μW/K2cm程度に到達することが明らかとなった。 電子ドープ領域の電子状態を明らかにするために、Ca1-xLaxPd3O4の光電子分光スペクトルを調べた。その結果、本系では多くの3d,4d遷移金属酸化物で見られるモット絶縁体とは異なりリジッドバンドモデルがよく成り立っている可能性を示している。 また、化学的置換効果によって格子定数の大きさを変えることでバンド構造を制御することを試みた。MgO基板上にSrPd3O4とCaPd3O4薄膜をパルスレーザー堆積法によって作成し、電荷輸送特性を調べた。電気抵抗率は小さな温度依存性を示すことが明らかとなった。特にSrPd3O4の方がより金属的な振る舞いとなることが分かった。バンド計算の結果、Sr系の方がバンドギャップが小さいという結果が得られたが、これは抵抗率が低い事と矛盾しない。これは格子定数の大きいSr系ではPd4dとO2p軌道間の相互作用が弱いために4d軌道間のエネルギー差が減少したというモデルで定性的に説明できる。
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