2021 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of Ultra-Strong Glasses via Spatiotemporal Dissipative Structure of Singular Stress Field
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21K18837
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
篠崎 健二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10723489)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ガラス / 金属ナノ粒子 / ナノインデンテーション法 / 高靭性 / 脆性-延性遷移 / SPS焼結 / ホットプレス法 / 応力集中 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラスの理論強度は鋼鉄やエンジニアリングプラスチックなどの他の高強度とされる材料とと比べても高く、理想的には遥かに高強度である。しかし、実用に供されるガラスの強度はこれより2桁以上低い。この原因は、ガラスが引っ張り応力下で均質な弾性体として振る舞い、ひとたび亀裂が発生してしまうと亀裂先端に応力が集中し、そしてその進展を止める機構が働かないためである。発生応力を低減したり応力集中を抑制すれば、ガラス本来の高い強度に近づけられると期待される。申請研究では脆さの原因である特異応力場を時空間的に分散させ、応力集中による割れが起きにくいガラスの実現を目指す。亀裂先端への応力集中で生じる巨大な応力場を時空間的に散逸させるための新しい高強度ガラスのアプローチを提案し、超高強度ガラスを実現することを目的とする。具体的には、亀裂先端周辺で大きく塑性変形するなどして応力集中を大幅に緩和することができる材料である。ガラスマトリックスの結合強度をできるだけ損なわないようにしつつ応力集中を低減できるような材料を検討する。例えば金属ナノ粒子による金属延性を利用することや、遅延弾性の大きなガラスなどを検討する。このようなガラス材料の開発と、量産困難な特殊なプロセスを用いることなく、量感可能な新規プロセスを提案する。それに適したプロセスを開発する。ナノインデンテーションや曲げによる亀裂進展試験を行い、そのメカニズムについて実証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はガラス中に金属ナノ粒子の分散により亀裂進展への抵抗を高める検討を行った。 シリカ(SiO2)ガラス中に析出したサブマイクロサイズのAgをスパークプラズマ焼結(SPS)法により作製し、その微細構造、機械特性、および熱伝導率を調査した。硝酸銀(AgNO3)の分解によりAgサブマイクロ粒子が加熱過程で生成し、SiO2マトリックス中に均一に分布した。TEM観察により100-300 nmのAgナノ粒子が観察され、ガラスマトリックスにはAgの残存は確認されず、添加したAgはほぼすべて結晶として析出したことが示唆された。Ag粒子の析出により、Ag粒子の延性に起因する大きな定常クリープ変形と塑性変形が観察された。また、亀裂の進展に伴い、Ag粒子の亀裂のブリッジングが観察された。その結果、SiO2ガラスの破壊靭性はAg含有量の増加とともに向上することがわかった。1200℃で焼結した1.4 vol%のAgを含む試料は、2.15MPa m1/2の高い靭性値を示した。高温で焼結した試料では、Ag粒子が大きいため変形しやすく、延性が大きくなる傾向がある。Ag添加量の最適化を行った結果、2 vol%を超えるとガラス相の結晶化が誘起されたため破壊靭性の向上はこれ以上起きなかった。また、金属ナノ粒子が及ぼす変形挙動への効果をナノインデンテーション法にて検証した。硬さや押し込み弾性率にはほとんど影響を与えないものの、最大荷重の保持過程でのクリープ変形は大きくなり、塑性変形の寄与が示唆された。本研究の目的の一つである延性付与によるき裂耐性の向上を実証することができたので、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
延性は転移の移動により起きることが知られている。本研究で開発したガラスのき裂耐性向上のメカニズムをより明らかにするには、粒内の転移の移動とガラスと粒子の界面での滑りのどちらが主であるのかを解明する必要がある。転移の発生と進展は粒径に大きく依存することが知られており、ナノ粒子のサイズ依存性について調査を行う。また、分散させる粒子について、Ag以外の種々の金属、合金、あるいはガラス、セラミックスナノ粒子を検討する。また、ガラスのビッカース押し込み試験により形成する亀裂発生と進展のメカニズムについて、ガラスの変形挙動が大きく影響を及ぼすことが知られている。すなわち、圧子下で高密度化が優位なガラスと塑性流動が優位なガラスである。このガラスの変形挙動に着目して、マトリックスとなるガラス組成を検討する。例えばソーダライムガラスやホウケイ酸塩ガラスの組成を変えたガラスに対して同手法を適応することでガラスの高圧下での変形挙動の異なるガラスでも同じ効果が得られるかを検証する。また、ビッカース圧痕周辺の断面観察やラマン分光などを組み合わせて圧子直下での高圧場下でのガラスの構造に及ぼす効果を検証する。また、押し込み破壊では減少が複雑なので、曲げ試験などより破壊現象の解析に適した手法により評価を行う。曲げ試験に適したサンプルサイズの合成が困難な場合はガラス表面に曲げ試験片を作製しナノインデンテーションにより曲げ試験を行うマイクロカンチレバー曲げ試験を実施する。これらの実施により、より破壊靭性の高いガラス材料開発の設計指針を明らかにすることができる。
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