2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18838
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 広和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30545968)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | メタン / 部分酸化 / 酸素 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素分子を酸化剤に用いて天然ガスの主成分であるメタンを部分酸化し、メタノールを合成することが本研究のゴールである。作業仮説に基づいて触媒のスクリーニングを行ったところ、アルミナに担持した低原子価のレニウム酸化物がメタンを酸化して、一酸化炭素を生成することを見出した。通常、この種の反応では、メタンの完全酸化が進行して酸素が完全に消費し尽くされた後に、水蒸気改質が進行することで一酸化炭素が生成する。しかし、本レニウム触媒は、酸素が残存する条件でも、一酸化炭素を50パーセント以上の選択率で与え、その値は酸素転化率にほとんど依存しなかった。この結果は、完全酸化改質ではなく、直接部分酸化経路で一酸化炭素が生成することを示唆している。 そこで、反応中間体を赤外分光により調べたところ、メタンが酸化されるとギ酸アニオン種が生成し、それが分解することで一酸化炭素が得られることが示唆された。このことから、反応中間体としては含酸素化合物が生成していることが分かった。 また、低原子価のレニウムは不安定であるが、少量のルテニウムを一緒に担持することにより、低原子価状態を維持でき、高い触媒活性が得られた。反応を追い込むと、酸素が消費された後に改質が急速に進行し、一酸化炭素と水素が高収率で得られた。これは、本研究の直接的な目的ではないが、酸化反応による一酸化炭素・水素合成は化学工業の重要なターゲットになっており、意義のある結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今のところ生成物としてメタノールは得られていないものの、研究計画に記載した作業仮説を元に確かに部分酸化を進める触媒を発見できた。したがって、研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
低原子価レニウム酸化物は不安定であり、その状態を安定化させる必要がある。ルテニウムによって安定化させると、ルテニウムの触媒活性による影響が避けられないため、別の方法で安定化したいと考えている。たとえば、ゼオライトの酸点と相互作用させることにより、電子密度が低下し、低原子価状態が安定化できる可能性がある。もしくは、複合酸化物化させることにより、低原子価を安定化させる。これによって、触媒性質もチューニングできると考えられるので、メタノールを生成するか調べる。
|
Causes of Carryover |
一酸化炭素のボンベの納入が遅れて年度内に納品されなかったため、次年度に執行することとなった。
|