2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18840
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 博章 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20282337)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロフルイディクス / 溶液操作 / バルブ / ポリピロール / 亜鉛 / 微小櫛型電極 / 双方向送液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マイクロシリンジポンプ等の外部機器に依存せず、チップ上に集積化された電気化学素子のみで、化学分析等で必要な微量溶液の高度な操作を自立的に行うデバイスの実現を目指している。本研究で用いるデバイスは、送液制御に必要な電極を形成した親水性のガラス基板と、微小流路・容器を形成した疎水性のポリジメチルシロキサン(PDMS)基板から構成される。これまでの研究で、①電位印加によるポリピロール表面の疎水性から親水性への変化を利用した毛細管現象を制御するバルブ、②①のバルブと接続された亜鉛電極によるバルブの自立的スイッチング、③微小櫛型電極からの水素バブルの生成・消滅を利用した双方向送液、③溶液(液絡)による接続の金属接続への置き換え等の要素技術を開発してきた。申請時には、これらの要素技術を基礎に高度な溶液操作を可能にするための基本回路を提案し、第一段階の課題とした。21年度は①複数流路への逐次または同時溶液注入機構、②2流路への溶液導入にともなう自動溶液混合機構、③微小櫛型電極上での水素バブルの生成または消滅を亜鉛の酸化または銀イオンの還元により引き起こすことで動作する自立的送液機構、④遅延機構等の基本回路の動作確認を行った。溶液の計量、注入、混合、送液、排出等、化学分析あるいはアクチュエータ駆動で必要になる一連の操作はすべてこれらの組合せで実現できる。 以上の基本回路を元に、より複雑な溶液操作を行うデバイスの作製、評価も開始した。21年度は自立的に双方向送液を行うユニットを作製し、評価を行った。微小櫛型電極からの自立的な水素バブルの生成・消滅は確認されたが、電極、微小容器の設計に問題があり、微小流路中の溶液を再現性良く前進、後退させるところまでには至っていない。現在、この点について改良中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究計画の予定通りに着々と進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
21年度の研究で、電気化学回路を形成するための基本回路の動作の確認は完了した。しかし、この過程で問題点も浮上した。一つは微小流路内の送液に時間がかかることである。微小流路内壁に親水性ポリマー層をコーティングすることにより、よりスムーズな送液を実現する。また、22年度の研究で機能を確認した基本回路を基礎にして、より複雑な溶液操作が可能な高度なシステムの実現へと進む。その一例として、21年度は自立的双方向送液ユニットの作製、評価も開始した。現時点では想定された機能が実現されていないが、電極・流路構造の最適化により問題の解決を図る。また、これを基礎に上記のユニットを複数用いた逐次溶液注入・排出機構の実現も試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、予定していた国際、国内学会がすべてオンライン開催となり、申請書に記載した旅費、学会参加登録費を使用できなかった。今後、コロナ禍が終わった段階で国際、国内学会での発表が増えるため、無理に使用することはせず、2022年度以降に繰り越すこととした。
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