2021 Fiscal Year Research-status Report
難反応性低級アルカンからの化成品原料の低温合成を実現する触媒反応プロセス開発
Project/Area Number |
21K18845
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多湖 輝興 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20304743)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ゼオライト内包貴金属触媒 / プラチナ / ロジウム / ZSM-5 / ナフサ低温接触分解 / 低級オレフィン / 芳香族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,石油中のナフサに含まれるC5成分(n-ペンタン等)を低級オレフィン(エチレン,プロピレン)ならびに芳香族類(キシレン,トルエン)に転換するための,貴金属活性点と固体酸点を近接配置した貴金属内包ゼオライト触媒の開発である. 油中水滴型マイクロエマルション中で金属微粒子(Rh微粒子,Pt微粒子)を調製し,同微粒子を核として,MFI型ゼオライト(ZSM-5)を形成させた(Rh@ZSM-5,Pt@ZSM-5).このとき添加する金属水溶液濃度,Al量によって金属担持量を0.1wt%~1.0wt%の範囲,ゼオライトの酸点量をSi/Al=∞,200,100,80の範囲で制御することに成功した. 分子サイズの異なる炭化水素の水素化反応(n-ヘキセン,ベンゼン,トルエン,トリメチルベンゼン)を実施したところ,分子サイズ選択的な水素化反応(トリメチルベンゼンの水素化が進行しない)の進行を確認した.これは,金属微粒子がゼオライト粒子内部に固定化されており,ゼオライト細孔由来の分子篩能により選択的な水素化反応が進行したためである.含侵法触媒では,触媒調製時に金属のシンタリングが進行し,TEM観察では10nm以上の粒子が確認されたが,一方,Pt@ZSM-5とRh@ZSM-5では,金属粒子サイズは約3nm程度であり,内包構造に起因する優れた耐シンタリング性を示した. n-ヘキサンとn-ペンタンをモデル原料とし,400~500℃における低級オレフィン合成を実施した.この温度域では,金属を担持していないZSM-5を触媒に用いた場合,n-ヘキサンの転化率は約10%程度,n-ペンタンの転化率は3%程度である.一方,Pt@ZSM-5は極めて高い活性を示し,450~500℃において約50%以上の転化率と高い低級オレフィン選択性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ナフサ中に含まれる難分解性留分であるC5成分(n-ペンタン等)を低級オレフィンと芳香族類に転換する触媒,特に貴金属活性点と固体酸点を近接配置したゼオライト内包貴金属触媒の開発を目的とする.2021年度までに,油中水滴型エマルションを反応場とする触媒調製法により,MFI型ゼオライトであるZSM-5粒子内にロジウム(Rh)微粒子,プラチナ(Pt)微粒子を内包させたRh@ZSM-5とPt@ZSM-5の開発に成功した.合成時のエマルション溶液への金属添加量,およびSi/Al比を制御することにより,金属担持量と固体酸量を独立に制御することに成功している.分子サイズの異なる各種炭化水素の水素化反応により,RhとPtの貴金属微粒子はゼオライト粒子内に固定化されていることを明らかにした. Rh@ZSM-5とPt@ZSM-5を触媒に用い,ノルマルペンタン(n-C5)とノルマルヘキサン(n-C6)の低温接触分解を実施した.同反応では貴金属上での脱水素反応が律速段階であるため,Rhと比較し脱水素能に優れるPt微粒子を内包したPt@ZSM-5の方がn-C5とn-C6の脱水素反応が速やかに進行し,450℃~500℃の低温域でのクラッキング反応を達成した.さらに,金属担持量を増加させることにより触媒活性を向上させることに成功している.Rh@ZSM-5では450℃において安定な触媒活性を示した.一方,Pt@ZSM-5では,反応時間の経過に従い触媒活性の低下が観察された.固体炭素状の析出物は観察されず,また焼成処理により触媒活性が復活することから,反応中間体であるアルケン,もしくは生成物であるエチレンとプロピレンの吸着による拡散阻害の可能性が示唆されている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の検討により,ゼオライト内包貴金属微粒子触媒の開発,およびナフサ成分の低温接触分解を達成している.本年度は,中心となる触媒としてはPt@ZSM-5,反応原料にn-C5を主に用い,ナフサ低温接触分解による低級オレフィンと芳香族類の高効率・高収率合成と触媒活性の安定性向上に取り組む.反応条件としては500℃以下とする.昨年度間に問題となっている,反応中間体のC5アルケン,もしくは生成オレフィンのゼオライト細孔内吸着による拡散阻害を抑制する方法として,(1)吸着炭化水素の脱離,(2)生成炭化水素の拡散性の向上,を検討する. (1)に関しては,450℃~550℃の範囲で反応実験を実施し,反応温度と触媒活性の関係を明らかにする.さらに,Pt担持量と固体酸量が触媒活性と安定性に及ぼす影響を明らかにする. (2)に関しては,内包Pt微粒子の固定化場所をゼオライト粒子の外表面近傍に限定する触媒調製法の開発,およびゼオライト粒子間のメソ孔の形成を検討する. そして,上記(1)と(2)の検討を基に,芳香族類(トルエン,キシレン)合成を実施する.ここでは,ペンタンから生成したエチレンやプロピレンと原料ペンタンの2量化反応により炭素数6以上の直鎖炭化水素が生成するとともに環化反応により芳香族へ転換されると考えている.2量化反応は固体酸点上で進行すると考えられるが,環化活性を向上させる方法としてPt@ZSM-5へのZnやGa等の第2成分の添加を検討する.反応条件(原料供給速度と原料分圧,反応温度)を調整し,芳香族類の収率を最大化できる触媒構造(Pt担持量,酸量,メソ孔,第2成分添加)と反応条件を明らかにする.
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Causes of Carryover |
2021年度において,ゼオライト内包貴金属触媒の調製とナフサ留分の低温接触分解を速やかに進めることができた.そのために,2021年度予算のうち450,000円を2022年度に使用する.とくに2022年度では,当初の計画に加えて,芳香族収率のさらなる向上を目指した研究を開始する.そのため,触媒開発にかかわる経費(触媒試薬,分析費用)と反応試験消耗品(反応ガス,原料ガス,およびガス分析の消耗品)に使用する.また,対面での学会発表を可能な限り実施する予定であり,成果発表費用として使用する.
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Research Products
(8 results)