2022 Fiscal Year Research-status Report
Innovative catalytic conversions to produce high value-added chemicals from cell-wall polysaccharides
Project/Area Number |
21K18852
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
恩田 歩武 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (80335918)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 雅規 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (30380306)
今村 和也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (30750624)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 多糖 / 海藻 / 固体触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の有機物資源の1つと期待される海藻は,食料や淡水資源と競合しない,成長速度が速くて太陽光利用効率が高い等,資源作物として利点が多い。海藻 の構成成分(水を除く)の約半分は「細胞間粘質多糖」であり,酸性官能基および金属カチオンを含有するヘテロ多糖である。類似の細胞壁多糖は,陸上植物で はヘミセルロースとも呼ばれ,セルロースと同等の存在量があり,構成単糖由来の高付加価値化合物(低分子量硫酸化多糖,オリゴ糖,希少糖等)の原料として 期待される。しかし,それら多糖は種類も多く酵素法の適用が困難とされる。そこで本研究では,光触媒と熱触媒を組み合わせた固体触媒法により,従来法の課題であるバイオマス中に存在する金属イオンによる失活を受けにくく,温和な反応温度で加水分解を促進する革新的な固体酸触媒の開発をめざして研究をすすめた。海藻として,最も高い成長速度を有するミナミアオノリに着目し,タンク養殖法でクローン的に約2kg(乾燥重量)を培養生産した。そこから、水熱法で、主構成成分であるウルバンという硫酸化多糖を抽出した。物性評価し,分子量は約800,000であった。それを,触媒水熱法により加水分解した。反応温度、時間、触 媒量により、分子量および硫酸化度を連続的に変化させた。得られた低分子量ウルバンの構造を、HPLC、GPC、IC、GC-MSなどのクロマト分析、および、元素分析、ICP、FTIR、NMRなど種々の分析法により解析した。また,光触媒変換への適用を検討し,ニトロベンゼンと種々の単糖の混合溶液に酸化チタンを入れて光照射したところ,水素なしでアニリンが高収率で生成することを確認し,その触媒プロセスを単糖ではなく海藻多糖やヘミセルロースなどのバイオマス多糖に変えても同様に進行することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンク養殖法でクローン的に約2kg(乾燥重量)を培養生産した。そこから、主成分である多糖ウルバンを水熱法で抽出した。触媒水熱法により加水分解した。反応温度、時間、触媒量により、生成する低分子量多糖の分子量および硫酸化度を連続的に変化したことを、各種分析装置で確認した。また、光触媒変換への適用を検討し,ニトロベンゼンと種々の多糖、オリゴ糖の混合溶液に酸化チタンを入れて光照射したところ,水素なしでアニリンが高収率で生成することを確認した。このように、海藻の生産、海藻多糖の抽出、水熱法による海藻多糖の触媒変換、光触媒法による糖を用いた有機物変換のいずれにおいても、順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目に引き続き,海藻多糖の生産、化学変換、分析を行う。海藻多糖の多くは市販されていないため、化学試薬と同程度の研究用グレードの海藻多糖を得る。その方法は、化学的に高い再現性で多糖を生産するために、DNA既知の株を10kg程度の海藻を生産し、その主構成性成分である細胞間粘質多糖を抽出する。海藻として,成長速度が最も早い(全植物中でトップクラスの成長速度の)ミナミアオノリを中心に、複数種類のアオサ属を行う。いずれも,キログラムスケールで海藻を生産し,そこから得られた多糖は,alditor acetate法(GC分析), NMR, TOF-MS分析などにより多角的に化学構造分析する。細胞間粘質多糖(海藻多糖およびヘミセルロース)の選択的加水分解に有効に働 く光応答性の固体触媒プロセスの開発を行う。様々な固体酸触媒および金属酸化物材料を用いて,多糖・オリゴ糖の化学構造と反応性の関係を解明する。固体酸触媒は,炭素系のほかにゼオライトなども検討する。光照射に応答して触媒作用を示すTiO2について、光触媒作用と熱触媒作用を解明する。それぞれの触媒系に対する,水溶媒中の金属イオンの阻害効果,触媒粒径の影響,触媒の親水性―疎水性の影響についても検討する。今年度の研究体制は,3名で,恩田歩武がバイオマス多糖の触媒変換・抽出,固体触媒調製を担当し,今村和也が光 触媒による有機化学反応を担当し,平岡雅規が海藻育成を担当する。
|
Causes of Carryover |
反応容器の部品が年度内に納入されなかったため。なお、実験は、既存の古い反応容器で代用して進めることができた。
|